「中国・韓国」に完敗か…「マリオ・ポケモン」を生んだ日本のゲーム業界を衰退させた背景にあるもの
そのような状況とは対照的に、日本では民間企業任せの状態だ。ヒット作品を他メディアに展開させるノウハウはあるが、各社が行い、そのスキルは外にまず漏れない。横断的な取り組みをベンチャー企業が担おうとするも、大手企業はその流れに乗ろうとしない。韓国のように政府系機関が音頭をとって官民一体で海外進出を狙う動きは乏しいと言わざるを得ない。 分岐点、と細井教授は指摘し、こう語る。 「日本にはまだ過去の優れた作品が残され、そのアドバンテージがある間に構造改革を行うべき。ポケモンやスーパーマリオは世界でヒットしています。しかし、中国や韓国のコンテンツが台頭し、世代が変わった時、日本発のコンテンツがランキングに入らなくなっているかもしれない。 いま何とかしないといけないタイミングなのですが、日本は国内市場がそこそこあり、スマホゲームが一つ当たれば、『ガチャ』と呼ばれる課金のシステムもあり、数年間は収益が出ます。しかし、予想を超えるスピードの少子化で国内市場は急速に縮んでいきます。 当たったゲームだけでなく、過去の資産として眠っている良質なコンテンツを、海外のようにスマートに映画やドラマ、小説、漫画へと循環していけば、大きな収益も生まれ、何より多分野で新しい人材が育っていくんですが…」 世界のゲーム市場で日本のシェアは年々下がっている。細井教授によれば「単純な推計は困難であるが」とした上で、’01年は35%のシェアを誇ったが、’14年19,3%、’22年13.4%に減少している。 世界を席巻した日本のアニメもNetflixなどの表現の自由度が高く、資金豊富な米国企業に国内の優秀な人材が流れている。国内の優秀な人材が外資に移ると、海外メーカーはさらに繁栄する。反対に国内では人材が枯渇し、負のスパイラルは進んでいく。 「ゲームアーカイブの保存環境の整備・推進は不可欠です。例えば、ファミコンのソフトは約1200種類ありますが、アメリカやヨーロッパ、韓国の研究機関ではファミコンを含む大量のゲーム資料が収集・保管され、充実したコレクションを有する所蔵館も存在しています。一方の日本では、国立国会図書館や一部の大学、民間機関で収集・保管されていますが、いずれも小規模で運営に課題を抱えている状況です。 ファミコンについては、日本中を熱狂させただけあり、1200種類の中に遊びのアイデアや面白さのアイデアが網羅的にあるんです。 日本のコンテンツには埋もれた資産がたくさんあります。日の目を見ずに埋もれてしまった作品の中にも小さな種がたくさん宿っています。戦略を練って、アーカイブから学び、国際的に通用するコンテンツや人材の育成の場とすることを始めるべき」(細井教授)