『デ・キリコ展』4月27日から東京都美術館で 形而上絵画から挿絵、彫刻まで70年以上の創作活動を網羅する大回顧展
20世紀初頭に「形而上絵画(けいじじょうかいが)」と後に自らが名づけた謎めいた作品群を発表して、シュルレアリスム運動に多大な影響を与えた画家ジョルジョ・デ・キリコ(1888-1978)。その70年に及ぶ画業を展観する大回顧展が、4月27日(土)から8月29日(木) まで、上野の東京都美術館で開催される。 【全ての画像】《「ダヴィデ」の手がある形而上的室内》ほか(全15枚) 「形而上学」は古代ギリシャに始まる哲学だが、デ・キリコの「形而上」は哲学というよりも、「日常の奥に潜む非日常」を指す言葉として使われていたそうだ。イタリア人の両親のもとギリシャで生まれ、ドイツでニーチェなどの哲学や象徴主義の絵画などから影響を受けたデ・キリコは、パリに滞在した1910年頃から、簡潔明瞭な構成で広場や室内を描きながらも、歪んだ遠近法や脈絡のないモティーフの配置、独特の幻想的な雰囲気によって、「日常の奥に潜む非日常」を描き出したのだった。 ダリやマグリットなどシュルレアリストに大きな衝撃を与えつつも、やがて伝統的な絵画技法に対する関心をより深めたデ・キリコは、古典絵画の様式へと回帰し、シュルレアリストたちと袂を分かつこととなる。その一方で、自身の以前の形而上絵画の題材を取り上げた作品も頻繁に制作し、また後年には、これまでの創作を統合した「新形而上絵画」と呼ばれる作品の制作も行った。 同展は、そうした複雑な歩みを見せたデ・キリコの初期から晩年までの絵画を余すところなく紹介するものだ。画業を代表する「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」などのテーマに分けて、それぞれの初期の代表作から後年の展開へとたどることで、時代ごとの作品を比較しつつ、デ・キリコ芸術の全体像に迫る構成となっている。 同展の出品作品は100点以上に及ぶ。とりわけ評価の高い初期の形而上絵画は世界の名だたる美術館に収蔵されており、集めるのが難しいものだが、今回はその稀少作が充実しているのも見どころのひとつ。また、絵画のみならず、彫刻や挿絵、舞台美術に関わる作品の展示もあり、長いキャリアの中で展開された幅広い創作活動にもふれることができる。日本では10年ぶりとなるこの大規模な回顧展で、デ・キリコが生み出した謎と不思議に満ちた世界を心ゆくまで堪能したい。 <開催概要> 『デ・キリコ展』 会期: 2024年4月27日(土)~8月29日(木) 会場:東京都美術館