藤原竜也が“叫ばない”抑えた芝居に 『全領域異常解決室』第1話から新たなジャンルを構築
※本稿は第1話の結末に触れています。
藤原竜也が主演を務める連続ドラマ『全領域異常解決室』(フジテレビ系)が10月9日にスタートした。警視庁音楽隊カラーガード出身の刑事・雨野小夢(広瀬アリス)と「全領域異常解決室」(通称:全決)の室長代理の興玉雅(藤原竜也)が、「神隠し」「シャドーマン」「キツネツキ」など現代科学の常識では考えられない“異常”に挑んでいく。 【写真】 『全領域異常解決室』第1話のMVPだった工藤美桜 本作は脚本の黒岩勉が手がけた『ラストマン-全盲の捜査官-』(TBS系)や、演出の石川淳一の『絶対零度~未然犯罪潜入捜査』(フジテレビ系)といった王道のミステリードラマのどれとも異なる。藤原が演じる興玉たちが属する全決が対象としているのは超常現象やオカルトの類だ。身近な事件×超常現象というだけでワクワクしたのは私だけではないだろう。本作は新たなミステリードラマの形を示してくれるように気がしている。 新宿歌舞伎町で起こった事件現場には服と持ち物のみが残されており、その場にいた松宮瑠偉(吉村界人)は“ヒルコ”の存在をほのめかす。ある日当然、小夢は全決への出向を命じられ、全決の本部を訪れると興玉と局長の宇喜之(小日向文世)がいた。「全決になれるのは素質のあるものだけ」。なぜ小夢は全決に異動することになったのかということは、宇喜之のこの言葉がヒントになっていそうだ。 興玉が現在捜査している「神隠し事件」を解決するために警視庁捜査一課へ赴いた興玉と小夢。荒波(ユースケ・サンタマリア)が「神隠し事件」の重要人物として捜査している松宮は事件をきっかけに、「ヒルコが見える」とほのめかすようになったという。しかし、興玉は防犯カメラに映し出されている人間の影から、ヒルコではなく、シャドーマンの仕業ではないかと指摘する。さらには人間の頭髪を密かに切ると言われている日本の妖怪・黒髪切まで出てきて、まさにオカルト・妖怪好きにはたまらない展開に。 松宮の事務所を訪れた興玉と小夢は松宮のスタイリストで妻のひより(志田未来)から事件について詳しく聞く。松宮によると、ヒルコが見えるようになったのは1カ月前かららしい。興玉は何かを察したのか、松宮を連れて新たな事件現場へと向かう。そこには松宮が関係していた2人の遺体があった。なぜ、この事件だけ遺体が存在しているのか。それは妻のひよりが行った生配信によって明らかになる。 生配信で松宮の妻であることを明かしたひよりが事務所から帰宅している途中、後ろから包丁で襲いかかってきたのは松宮の熱狂的なファンでガールズバー経営者の駿河美鶴(工藤美桜)だった。間一髪のところで松宮が美鶴を制止し事なきを得るが、松宮は美鶴とともにその場から立ち去ろうとする。 そこに現れたのは興玉と小夢。一時は松宮に人質に取られていた興玉だったが、いとも簡単に松宮を武力で制圧。今回は藤原のアクションは見られないとばかり思っていたので、短いとはいえ堪能することができたのは嬉しい誤算だった。美鶴は推しである松宮をスターダムに押し上げるために、松宮と協力してヒルコの神隠し事件を模倣していたのだ。 工藤美桜といえば、『仮面ライダーゴースト』(テレビ朝日系)、『魔進戦隊キラメイジャー』(テレビ朝日系)などの印象が強い。けれども、本作では推しに愛を向ける熱狂的なファンとして狂気的な演技を見せていた。あそこまで推しへの狂った愛情を表現できるのはさすがの演技力としか言いようがない。第1話は間違いなく工藤の好演が物語を引き締めていたように思う。 そして、忘れてはならないのは本作の主演である藤原竜也の存在だ。『デスノート』シリーズや『カイジ』シリーズ、ここ数年では『青のSP(スクールポリス)―学校内警察・嶋田隆平―』(カンテレ・フジテレビ系)でのスクールポリス役も記憶に残る藤原が、本作では抑えた演技で淡々と言葉を紡いでいく。決して大胆な演技こそないが、藤原の演技の深さがあってこそ成立しているドラマだと感じた。とはいえ、どこかで大声を上げるのではないかと期待している自分もいる。 松宮と美鶴が起こした殺人事件は解決したが、まだヒルコの神隠し事件は未解決である。小夢も何やらヒルコらしき影が見えているようで……。その正体は本当にヒルコなのか、それとも人間なのか、はたまたそれ以外の何かなのか。この先も様々な超常現象と絡んだ事件が登場しそうで、今から楽しみだ。
川崎龍也