中国の若者の失業率が今年最高に…たった7年で出生数半減、少子化の波は止まらず国力衰退も不可避
ペット天国化、教職にも淘汰の波
中国の出生数減少は猛烈な勢いで進んでいる。日本で出生数が半減するまで約40年、韓国で約20年だったのに対し、中国ではわずか7年(2016年の1889万人から2023年の902万人)だった。 中国政府は危機感を募らせているが、事態はさらに悪化する可能性が高い。 米大手金融のゴールドマン・サックスが最近発表した予測によれば、今年は中国の4歳未満の乳幼児の数とペットの数がともに約5800万と拮抗しているが、2030年には前者が4000万弱、後者が7000万強になるという(8月18日付日本経済新聞)。 中国が日本のような「ペット天国」になるのは時間の問題だというわけだ。さらには少子化のせいで、若者の就職難がさらに進む懸念も生じている。 中国では雇用の安定した職業のことを「鉄飯碗(鉄で作った碗のように安定している)」と呼ぶが、その1つとされた教職にも淘汰の波が及んでいる。昨年は過去20年間で初めて幼稚園などの教員数が減少した。加えて、北京師範大学の試算によれば、2035年には小中学校の教員の約2割が余剰になるという。
海外移住阻止で渡航制限か
若者の不満を無視するかのように、中国政府が規制強化を進めていることも問題だ。中国政府は7月下旬、インターネット利用時 の本人確認のため、公認のネット番号と身分証を発行する規則の草案を発表した。 「中国での未来に希望が持てない」という思いから、若者の間で広がる海外移住の動きも政府の心配の種だ。香港の英語紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」によれば、中国の独身女性の間では、30代で海外留学し、欧米の大学で修士・博士号を取得するのがトレンドになっているという。 一方で今年の夏、一部の層が海外旅行を制限されたと報じられた。米ラジオ・フリー・アジアによれば、夏休み前に学生と教師、銀行員のパスポートが“回収”され、SNSには当事者たちによる投稿が相次いでいるという。海外移民の動きを抑止するのが狙いだと囁かれているが、若者の海外移住の流れは止まることはないだろう。 若者に明るい未来を提示できない限り、中国の国力は今後、急速に衰退してしまうのではないだろうか。 藤和彦 経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。 デイリー新潮編集部
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