W杯代表メンバー決定前のJリーグで最後のアピールに成功したのは誰だ?!
高さと強さでアピールしたのが11戦連続無敗を続け、3位につける札幌をけん引するエースストライカーの都倉賢だ。187cm、80kgの恵まれたサイズを持ち、空中戦だけでなく、日本人離れしたフィジカルコンタクトの強さでも相手チームの脅威と化してきた。 西野監督との接点もある。 ヴィッセル神戸でプレーした2012シーズンの途中から約半年間、急きょ就任した西野監督の指導を受けた。利き足の左足を「とにかく振り抜け」と、長所を生かすことの大切さを説かれた都倉は、豪快なミドル弾など6ゴールを決めた。 年代別代表を含めて日の丸とは、縁のないサッカー人生を歩んできた都倉は6月に32歳になる。それでもFW本田圭佑(パチューカ)ら、同世代の日本代表組の活躍に刺激され、移籍を繰り返しながら非凡な潜在能力をゆっくりと開花させてきた。 16年ぶりとなるコンサドーレのJ1残留に貢献した昨シーズンは、自己最多の9ゴールをマーク。今シーズンは攻撃的なサッカーを標榜するミハイロ・ペトロヴィッチ新監督のもとで、新たなサッカー観を注入されながらチーム最多の5ゴールをあげている。 「FWはその瞬間、瞬間で一番好調な人が選ばれる可能性はあります。ただ、僕の場合は限りなくゼロに近いので。このサッカーで自分自身をさらに確立していくのと同時に、コンサドーレをもうワンランク上のチームに導けるようにしていくだけだと思っています」 都倉自身は無欲を強調するが、同じく高さと強さを武器とするFW杉本健勇(セレッソ大阪)が右足内転筋を痛めて離脱を強いられている。相手のセットプレー時など、高さは守備面でも日本の武器となるだけに、心技体で充実している都倉の存在感はいやが上にも増してくる。
そして正確無比なキックで魅せたのがMF天野純(横浜F・マリノス)となる。西野監督が視察に訪れた12日のガンバ大阪戦(日産スタジアム)の後半16分には、ペナルティーエリアの左手前、約18mの距離から完璧な直接FKをゴール左上の隅へ鮮やかに突き刺した。 ザックジャパン時代の2013年9月のガーナ代表戦でMF遠藤保仁(ガンバ)が決めたのを最後に、日本代表では、直接FKによるゴールが生まれていない。正確にボールを操るキッカーがいないと、ハリルホジッチ前監督は何度も嘆いていた。 順天堂大学から加入して5年目の天野は、ユニバーシアード代表を除けば、年代別の代表に招集されたこともない。それでもレフティーの偉大なる先輩として、2016シーズンまで在籍したレジェンド中村俊輔(現ジュビロ磐田)の背中を追い続けた。 チーム内でも1、2位を争う豊富な運動量で、昨シーズンから中盤で指定席をゲット。迎えた今シーズンは4月28日の鹿島アントラーズ戦でも直接FKを決めるなど、キックの精度の高さは海外組を含めた日本人選手のなかでもトップクラスにランクされる。 「それ(キック)以外のプレーも高めていかないと、絶対に入れない場所だと思うので。コツコツとやっていきます」 キックには絶対の自信を抱きながらも、G大阪戦後の天野は思わず苦笑いを浮かべた。それでも、劣勢を強いられる戦いでは、CKを含めたセットプレーが勝敗における明暗を分けると言っていい。キッカー不在という苦境を、前任者の時代から引き継ぐわけにもいかない。 時間が限られている状況もあって西野監督はいわゆるサプライズ的な選考には慎重な姿勢を示している。その考え方からすると代表歴のない選手の選出はないのかもしれない。それでも、速さ、高さと強さ、そしてセットプレーは、ロシアの地で格上と対峙するうえで欠かせないキーワードとなるはずだ。 日本サッカー協会は、予備登録メンバーの顔ぶれを発表しない方針を固めている。今後は18日にガーナとの壮行試合(日産スタジアム)に臨む30人前後に絞り込まれたメンバーが発表され、ガーナ戦から一夜明けた31日には6大会連続6度目の大舞台に臨む23人が発表される予定だ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)