〈結局、誰に投票すればいい?〉過去最高の候補者56人が乱立する都知事選「候補者が多いことにメリットはない?」「売名目的が多すぎる」
それでも自分の主張に合う候補者がいない場合は… 候補者乱立の弊害も
とはいえ、それでも自分の主張に合ったり、信用できそうな候補者がどうしてもいない場合もあるだろう。こうした場合は、どのような投票行動をとればいいのか。 ちだい氏はこの問題に関して、「選挙は必ずしも『自分の主張に合うか』という観点で投票する必要がありません」と提案する。 「ありとあらゆる政策が自分の考えと完全に一致する人を見つけるのは至難の業です。そんなときは、自分の主張に合わなくても『誰が最も都知事にふさわしいか』という観点で投票することもできます。 候補者が信用できない人だらけだと嘆く人もいるでしょうが、もし100%信用できるなら銀行の暗証番号すら教えられると思いますが、そこまで信用できる人は家族ぐらいしかいません。なので、ある程度なら信用できそうだという人に絞り、そこから1人を選ぶという方法もあります」 信用問題に関しては、過去最高の候補者が乱立している状況への弊害もあるという。 「今回の東京都知事選には『信用できそうにない候補』がたくさん出ているのも特徴です。もし本当に都知事になりたいと思っている人が50人以上も立候補するのであれば、こんなに賑やかで素晴らしいことはありません。 しかし、今回は『売名』や『商売』を目的とし、最初から『東京都知事になりたいとは思っていない』と言い切ってしまうような人たちがたくさん立候補しています。 こうなってしまうと、候補者が多いことにメリットはなにもありません。ポスター掲示板の拡張費用には数億円がかかるし、人々の命や生活がかかっている大切な選挙に『宣伝』が入ることになります。 また、本来は立候補した人全員をよく吟味して、誰が最も知事にふさわしいのかを判断しなければなりませんが、そのためには誰が売名で、誰が本当に知事になりたいと思っているのかをまず調べ、整理をして、取捨選択をする作業が増えてしまう。 忙しくて時間がないという人たちは選択が適当になり、最もふさわしい人に投票するチャンスが失われかねないのです」
候補者乱立の弊害がこの記事でも…
この点に、ちだい氏は特に問題意識を感じているという。 「実は、こうしている今も、この問題は大きな影響を及ぼしています。というのも、僕がこの問題に触れ、コメントをしている時点で、本来はもう少し争点となる部分を掘り下げ、皆さんに解説できたかもしれないのに、候補者が乱立している問題に触れないわけにはいかず、候補者がたくさんいることばかりが報じられ、肝心の政策などが報じられる機会が失われているのです」 1400万の人口を抱えるメガロポリスとあって、国政への影響も必至の都知事選。有権者が投票用紙という名の短冊に込めた思いは、七夕の夜にどう表れるのか。 取材・文/久保慎
選挙ウォッチャーちだい