『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』S2E4、ついに“舞踏”が開幕 内戦が新たな局面に突入
ついに“舞踏”が始まった。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン2第4話「緋竜と金竜」は両勢力のドラゴンが宙を舞い、火炎が渦を巻く巨大怪獣映画さながらの一大スペクタクルだ。2頭の竜が牙を向けば破滅は免れず、シーズン2前半にしてサプライズの連続。物語は早くもピークに到達している。まずは決戦に至るまでの各陣営の動向を振り返っていこう。 【写真】『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』シーズン2エピソード4場面カット(複数あり) 第3話でハレンの巨城(ハレンホール)を陥落したデイモン・ターガリエン(マット・スミス)は、未だドラゴンストーン城に戦果を報告していなかった。レイニラ(エマ・ダーシー)の支持勢力を結集させることが目的だが、彼は自らが旗印にならんと野望を抱いている。かつてエイゴン征服王に滅ぼされたハレンの怨念か、デイモンは夜な夜な不気味な夢に悩まされ続ける。またしても10代の妻レイニラを幻視し、既に鉄の玉座に鎮座する彼女が言うのだ。「あなたが私を創った。それなのに破滅させようとしている。父上があなたより私を愛したから」。デイモンは迷うことなく剣を払い、怨霊の首を切り落とす。シーズン2は幼い王子の殺害に始まり、第4話に至るまで斬首のモチーフが何度も反復される。デイモンが城内を彷徨えば怪しい人影が眼前を横切り、それはエイモンドそっくりの出で立ちをした自分自身だ。ハレンホールの呪縛はデイモンを内なるダークサイドと対峙させているのか。 翠装派の王弟エイモンド・ターガリエン(ユアン・ミッチェル)もまた恐れ知らずなまでに玉座への野心を隠そうとしない。幼少期は兄エイゴン(トム・グリン=カーニー)に虐げられてきたものの、ウェスタロス最強の巨竜ヴァーガーを手に入れて以後、武芸に磨きをかけ、今や戦略にも長けた将才である。もはや城中に暗愚エイゴンを称える者はおらず、エイモンドは兄がろくろく操ることもできないヴァリリア語で愚弄する。自尊心を失ったエイゴンは『ゲーム・オブ・スローンズ』に登場した残虐な王ジョフリーに比べれば随分かわいいもので、必ずしも望んではいなかった王位のために打ちひしがれる姿は気の毒にも映る。「いったいどうしたらいいんだ?」と母に助言を求める場面で漏らす“Mother”という言葉は字幕にも吹き替えにも入らないが、年端もいかない息子がすがりついても、アリセント(オリヴィア・クック)はただ「何もするな」と突き放すのみ。その冷淡さはもとより、オリヴィア・クックのこれほどまでに強固な芝居の前ではエイゴンが無謀な功名心に突き動かされるのも無理はないと思える。 レイニラとの邂逅から夫の遺言を読み違えたことに気付いたアリセントは、身も心も悔恨に苛まれていた。彼女が学匠に煎じさせたのはシーズン1でも供された堕胎を促すお茶。アリセントはクリストン・コール(ファビアン・フランケル)との間に子供を身籠っている。不気味な“内反足のラリス”(マシュー・ニーダム)は立場こそ下にあるが常にアリセントの秘密と弱さを見破っており、巧妙に精神的支配下へと追いやっているように見える。アリセントは促されるまま「亡き王の意思など関係ない」と言い、なす術なく進んでいく現状に後悔の念を切り離す。 歴史は軽んじられ、遺された言葉は歪められる。アリセントとの会談が失敗に終わったレイニラもまた決意を固めていた。王位奪還か、さもなくば死か。亡父ヴィセーリスから伝えられた予言「氷と炎の歌」が物語るターガリエン家の宿命を、彼女は戦争を終わらせる大義名分に位置づけ、ドラゴンの使用を正当化してしまう。レイニラ支持を訴える諸侯が次々と翠装派に屈し、今もまた深山鴉の巣城(ルークス・レスト)が侵攻を受ける中、レイニラは自ら出陣を決意する。