『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』S2E4、ついに“舞踏”が開幕 内戦が新たな局面に突入
黒装派、翠装派ともに中心人物を失ったことで、内戦は新たな局面に突入
代わって先鋒を志願したのはレイニス(イヴ・ベスト)だった。緋竜“メレイズ”を駆り、深山鴉の巣城(ルークス・レスト)の翠装派を急襲。だが、ドラゴンストーン島から湾を隔てて間もない場所に位置する小城は、エイモンドとクリストンが黒装派のドラゴンを誘い出すべく選んだ罠である。そこへ予期せぬことに、追い詰められたエイゴンが金竜“サンファイア”に乗って自ら戦場に現れた。 ドラゴン同士の死闘は騎竜者の力量はもとより、ドラゴン自体が戦い慣れていることも勝敗を決める。若輩のエイゴンがレイニスに及ばないことはおろか、竜齢の幼いサンファイアでは、代々のターガリエンを乗せてきたメレイズの速度と獰猛さに敵わない。「赤の女王」の異名を持つメレイズがエイゴンを追い詰める中、ついにエイモンドとヴァーガーが現れる。エイモンドはもみ合う二頭めがけここぞとばかり炎を放ち、既にしたたかに痛めつけられていたサンファイアはエイゴンもろとも墜落。原作小説『炎と血』では仇敵の登場にレイニスが雄叫びを上げて立ち向かうと記されているが、テレビシリーズ版ではエイモンドの兄殺しが強調され、レイニスは敵に背は向けまいと静かに腰帯を締め直す。愛竜メレイズに「Old Girl」と呼びかけていた彼女もまた、年老いた者として戦争に終止符を打たんとする覚悟をのぞかせるのだ。互いに食らいつく2頭はきりもみし、舞踏の残痕は炎と化す。人間たちはただこの世のものではない天上人と竜の戦いに空を仰ぎ、地を這うばかりである。 しかし、レイニスとメレイズの連携をもってしても、ウェスタロス最大最古のドラゴン、ヴァーガーと若きエイモンドには太刀打ちできなかった。ヴァーガーの顎(あぎと)がメレイズの首に食らいつき、金色の眼から輝きを奪った瞬間、騎竜者の命運は尽きた。哀れなレイニスは愛竜と共に堕ち、爆炎に包まれるのだった。 黒装派、翠装派ともに中心人物を失ったことで、内戦は新たな局面に突入する。エイゴンの墜落現場に駆けつけたエイモンドがとどめを刺さんとばかりに剣を抜いたことから、王にはまだ息があるようだ。今や“王の擁立者”(キングメーカー)とも蔑称されるクリストン・コールは自ら招いた惨劇に崩れおち、かつて王の盾として誓いを立てた白亜の甲冑は、決して拭うことのできない汚れに塗れるのである。
長内那由多(Nayuta Osanai)