【独自】次世代電池技術が停滞の危機 「APB」メインバンクが更生法申請
世界初の「全樹脂電池」の開発を手がけるAPB(福井県越前市)をめぐり、メインバンクの北国銀行グループの投資会社が、今月1日付で東京地裁に会社更生法の適用を申し立てたことが、テレビ東京の取材でわかった。APBは創業者と一部株主が事業化をめぐり対立、夏ごろからは急速に資金繰りが悪化していた。申立書では「少なくとも20億円から25億円程度の実態債務超過の状態」としている。APBは10日付で申し立てについて全株主に通知した。東京地裁は近く更生手続きの開始の成否を判断する見通しだ。 「全樹脂電池」は、リチウムイオン電池の一種で、金属で作る従来の電池に比べ発火の危険が少ないとして、次世代EV=電気自動車への搭載に期待が高まっている。APBは、量産のカギとなる樹脂の積層技術などで特許を持っている。量産に向けた研究開発には、2022年にNEDO(新エネルギー・産業技術開発機構)が約46億円の補助金の支援を決めた。すでに10億円以上がAPBに拠出されたとみられる。だが、開発に関わる先行投資がかさみ、急速に資金繰りが悪化していた。今回の問題で、日本の全樹脂電池開発が停滞する恐れが出ている。
APBは、日産自動車でEV向け車載電池システムを開発したエンジニアの堀江英明氏が2018年に独立し、創業。全樹脂電池の開発を進めてきたが、その後、事業化を急ぐ一部の株主らと堀江氏との間で、経営方針をめぐる対立が鮮明化。今年6月の取締役会で堀江氏は社長を解任された。堀江氏は「会社の乗っ取りだ」などとして解任を主導したとされる大島麿礼副社長(現社長)らと争うとともに、大島氏らによる「中国への技術流出の疑い」も主張し、経営は混乱していた。 堀江氏に代わって社長となった大島氏はメインバンクの北国銀行と出資者である北国銀行グループの投資会社QRインベストメントと協議を進めていた。しかし、北国側は追加支援の条件に「開発者の堀江氏を中心とする経営体制」を求めていて、協議は難航。先月末までに不調に終わった。 QRインベストメントは今月1日付で東京地裁にAPBへの会社更生法の適用を申し立てた。地裁が選任した第三者の調査委員が20日までに調査結果をまとめ、その後地裁が更生手続きの開始を判断する。会社更生法が適用されれば、経営陣は全員退任することになる。 APBの大島社長は10日付で、会社更生法適用の申し立てがなされたことを全株主に向けて書面で通知した。その中で「会社更生手続き開始の要否についての協議を進めている最中であり、現時点で会社更生手続きの開始が決定されているものではございません」と記した。