震災後、神戸市民を励まし続けたゾウ「ズゼ」など紹介 王子動物園でリガ市との姉妹都市50周年特別展
ラトビア共和国の首都リガ市と神戸市が姉妹都市になってから、今年で50周年。節目の年に合わせ、神戸市立王子動物園(神戸市灘区)では、阪神・淡路大震災後、神戸市民を励ますためにリガから来園したアジアゾウ「ズゼ」などについて紹介する「『リガ・神戸』姉妹都市50周年特別展」が開かれている。 【写真】愛があふれてる!1996年、神戸に旅立つズゼに贈られた、リガの子どもたちからのプレゼント ズゼはメスのアジアゾウで、今年で34歳。ラトビア国立のリガ動物園で1990年に生まれた。ズゼの母はソビエト連邦(当時)のモスクワ動物園から借り受けられてリガ動物園にいたが、ズゼを出産後に死亡。モスクワ動物園側は代わりにズゼを引き渡すよう求めたが、ズゼを愛するリガ市民は募金活動を展開、集まった寄付金でズゼを買い取った。 その後、ズゼが4歳になった1995年1月、阪神・淡路大震災が発生。甚大な被害が出た神戸市に、リガ市は「何かできることはありませんか」と申し出た。それに対し、神戸市側は「王子動物園にいるオスのアジアゾウ『マック』のペアリング相手としてズゼに神戸に来てもらいたい」と要望した。「神戸の子どもたちを元気づけられるなら」と、リガ市側は快く送り出すことを決定。 だがズゼは、ラトビアで知らない人がいないほどの国民的な人気者だったため、手放すことに市民の一部から反対の声が上がった。それでも最終的にリガ市の人々はズゼの神戸行きを祝福し、別れに際してズゼにプレゼントや手紙、イラストなどを届けた。 1996年8月、ズゼはバルト海を船で渡りドイツの空港へ。成田空港から入国し、トラックに乗り換え、10日間かけて王子動物園に到着した。その後ズゼは、マックとの子を3頭出産(うち2頭は死亡)、国内で初めてアジアゾウの繁殖に成功した例としても知られる。 特別展では、ズゼの来園時の貴重な写真やエピソード、お気に入りの遊び道具である丸太、リガの子どもたちがズゼに贈ったプレゼントのぬいぐるみやイラスト、手紙などを公開。 また、これまでにリガ動物園からやってきたシベリアオオヤマネコなどズゼ以外の動物たちの紹介、神戸市とリガ市の友好の歴史が分かる年表や写真、今年6月に神戸市の一団がリガ市を表敬訪問した際の記録、ラトビアの文化や街並みを紹介するパネル、民芸品、リガ動物園グッズなども並ぶ。展示総数は計約140点。 30年近くズゼを担当している石川康司飼育員によると、ズゼは優しく、マイペースな性格。頑固な一面もあるものの、石川飼育員とはスムーズに意思疎通できるという。ふだんは主食の牧草のほか、カボチャやリンゴ、にんじんなどを食べているが、薬を飲まなければならない時やトレーニングの際に与えられる白ごはんやあんこが好物。ズゼのことが大好きなマックからしつこく追いかけられ、困った様子を見せる時もあるが、基本的に2頭は好相性で、寄り添って穏やかな日々を過ごしているという。 石川飼育員は「ズゼは母ゾウに育てられなかったために育児の仕方が分からず、母親としてはかわいそうだった」と回顧。「でもマックとはとても仲睦まじいので、その様子を多くの人に見に来てもらいたい。2頭とも健康で長生きしてほしい」と話した。
ラジオ関西