57歳・鈴木保奈美「仕事なくなるかも」 年齢を重ねて募った危機感、目覚めた“舞台愛”「好奇心のおもむくままに」
テレビから舞台に場を移した作品 スキャンダルに翻ろうされる知事役
カメラに映っていないスタッフの奮闘ぶりも記憶に残り、現場ならではの一体感もあったと振り返る。 「私たち俳優以上に照明、音声、技術……とスタッフの皆さんが走り回り、生放送で寸分の狂いもないようにリハーサルでも、シーンひとつごとにディスカッションされていました。本番でも通常のドラマの倍くらいの方々が奔走していて、舞台裏にいる方々は『本当に大変な仕事をされている』ということが如実に伝わってきて、スタッフの皆さんのおかげでこういう作品の構想ができているんだなと改めて感じて、尊敬の念もより強くなりました」 テレビから舞台に場を移しての『逃奔政走』についても「劇場という限られた空間ですから、コメディーとはいえどれだけ走るかはわかりません」と言いながら、「冨坂さんの舞台らしくセリフの量と密度も濃く、頭も体も休む暇はなさそうですが、その分、燃えますね」と意欲をみせている。 舞台の同作では、政界に進出し、クリーンなイメージで県知事に就任したすみれに「知事室に豪華なシャワールームを作ってぜいたく三昧」とのスキャンダルがのしかかる。舞台だけでも笑いが期待できる上、『Starting Over』から見ていくと『正義感の強いすみれがなぜ?』と感じる。サイドストーリーからの意外性も含めて楽しめる政治コメディーに仕上がっている。 「さほど深い意味はなくて、私の他にも続投するキャストもいるので『つなげてみたら面白そう』くらいの遊び心かもしれません。すみれにある程度のイメージがあることは『諸刃の剣だな』とも感じています。『元々はこんな性格の人だった』ということが皆さんにも共有されてしまっているので、私が自由に解釈して幅をつける余地が狭くなってしまうかもです。でも、皆さんには『2つの作品の間にすみれにどんなことがあったんだろう』と自由に想像していただけるので、楽しみが増えますね」
冨坂氏が一緒に活動してきた鈴木に抱いたイメージは「女帝」。そこから凛々しい女性知事の役をあててくれたという。 「冨坂さんいわく、今の私は『恋愛ドラマやヒューマンドラマよりも、社会に出て戦っている女性が似合う気がする』そうです。私のパブリックイメージってもっとあっさりといいますか、軽妙な人間に思われていそうだったので、骨太な印象を持ってくれる人がいることも意外でした。『Starting Over』から引き続いてすみれの娘の役をやってくれる榎並夕起さんがまたかわいい方なんです。私がしっかり引っ張っていかないとですね。政治家らしく(笑)」 凛々しいリーダーか、スキャンダルに翻ろうされるワイドショー政治家か。鈴木が舞台で見せるさまざまな姿が楽しみだ。 □鈴木保奈美(すずき・ほなみ) 1966年8月14日、東京都生まれ。86年にデビュー後、多くのCMやテレビドラマに出演。91年に出演したフジテレビ系連続ドラマ『東京ラブストーリー』で脚光を浴びる。以降、数々のトレンディドラマに出演。主な出演作にNHK大河ドラマ『江 ~姫たちの戦国~』、フジテレビ系『SUITS/スーツ』、Netflix『浅草キッド』、舞台『セールスマンの死』、舞台『レイディ・マクベス』など。現在、読書エンターテイメント番組にBSテレ東『あの本、読みました?』にレギュラー出演中。 ヘアメイク/福沢京子 スタイリスト/犬走比佐乃
大宮高史