“持たざる者”橋本英郎が11人の一員として必要とされ続けた理由 ボランチは「一番楽なポジション」?
パスの精度と相手の立場を理解することの重要性
「複数ポジションを経験したことが生きた」というのも、FWからセンターバック、頻度は低いですがGKまでいろいろなポジションの選手と攻守にわたって関わり合うボランチを主戦場にしていたからこそということも大きかった気がします。サイドにいる中盤の選手にボールを預けるにしても、このポジションを経験しているのとしていないのでは出すタイミング、足元なのかスペースなのか、ボールの質などあらゆることが変わってきます。パスの受け手は何を望んでいるのか? どんなプレーをしようとしているのか? 戦局を読み、効果的なプレーをするために味方の選手を“動かす”プレーをすることもあります。 こうしたプレーをするためには、自分がそのポジションでプレーしたリアルな経験が重要になります。あえてオフ・ザ・ピッチの話を強調すると、それまで“お山の大将キャラ”でミスする味方に詰めまくっていた私が、ジュニアユースでの挫折を経て“詰められる側”になったこと、ミスを叱責する側、される側、詰める側と詰められる側の両方を体験し、言われる側の気持ちを理解したことがパスの出し方、ピッチの中での味方との関わり方の大きなヒントになりました。 ガンバ時代にコンビを組むことが多かったヤット(遠藤保仁)はパスの受け手に合わせたプレー、受け手を動かすプレーがすごく上手でした。身近にこうしたお手本がいたことも、一つのプレー、一つのパスを考えるヒントになったと思います。 (本記事はエクスナレッジ刊の書籍『1%の才能』より一部転載) <了>
[PROFILE] 橋本英郎(はしもと・ひでお) 1979年5月21日、大阪府生まれ。ガンバ大阪のアカデミーを経て、1998年にトップ昇格。練習生からプロ契約を勝ち取り、不動のボランチとしてJ1初制覇、アジア制覇などガンバ大阪の黄金期を支えた。その後、2012年にヴィッセル神戸、2015年にセレッソ大阪、2016年にAC 長野パルセイロ、2017年に東京ヴェルディ、2019年にFC今治に移籍してプレーし、2022年おこしやす京都ACに選手兼ヘッドコーチとして加入。現役選手としてプレーしながら、Jリーグ解説者、サッカースクール・チーム運営など幅広く活動。日本代表としては国際A マッチ・15試合に出場。2023年1月に引退を発表。25年間の現役生活に終止符を打った。
文=橋本英郎