香港デモに暴力的な介入 警察から失われつつある市民の信頼
警察に殴り殺された? 市民側に疑念も
香港では9月に入って高層マンションからの転落死が相次いでいる。気になるのは自殺者の多くがデモに参加していた人たちであったことだ。警察は、自殺者の自室の窓が数十センチしか開いていなかったにもかかわらず、飛び降りを図ったとして発表するケースがあり、市民の間で「本当は警察に命を奪われたのではないか」と陰謀論が飛び交うきっかけとなった。
また8月31日に、九龍エリアにある太子駅で無抵抗の学生を警察が警棒で執拗に殴る様子が、ネット動画で拡散された。警察は当初10人と発表していた市民側の負傷者を、後に7人に「修正」。3人は行方不明だと結論づけた。警察の発表後、「3人は既に死亡している」と感じた市民は多く、太子駅前には臨時の献花台が周辺の住民によって設けられ、花や線香を供えに来る市民が後を絶たなかった。 「もしも警察と市民が和解する時が来るとすれば、それはかなり先の話になるでしょう。非常に長い時間を要すると思います。香港警察は長い年月をかけて築き上げた評価を失ってしまったのです」 本小姐さんは、警察と市民の和解には多くの時間が必要だと語る。かつて尊敬を込めて「アジアの警察官」と呼ばれた香港警察は、再び市民に寄り添う組織に変わり、信頼と尊敬を得ることができるのだろうか。
------------------------------ ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う