香港デモに暴力的な介入 警察から失われつつある市民の信頼
市民を煽る警察、突然の道路封鎖も
筆者は12日から15日まで香港に滞在し、その間にデモを2回と、警察と地元住民のにらみ合いを1回、取材することができた。15日に香港島の中心街で行われた大規模なデモ行進と、その後の警察とデモ参加者の衝突は日本でも報じられ、商業施設が多く並ぶ鑼湾駅近くでデモ隊と警察が衝突した際には、その様子を取材していた筆者の足元にも催涙ガス弾が発射された。その2日前の13日夜には九龍北部にある茘枝角駅近くの警察署の前で行われた数百人規模の抗議デモにも足を運んだが、午後11時を過ぎるとデモ隊は帰路に就き始め、警察署から機動隊などが外に出ることもなかった。
デモよりも気になったのが、警察による予告なしの道路封鎖だった。警察が突然主要な道路を封鎖して、動揺した近隣住民とにらみ合いになっているとの一報を受け、筆者は14日夕方に中国の深セン(※)から僅か10キロの場所にある天水囲に向かった。新興住宅地として知られる天水囲には多くの高層住宅があるが、この周辺の主要道路を地元警察が突然封鎖。住民に対して封鎖の予告や理由の説明は一切行われなかった。状況を問いただそうとした住民に、警察は強力なライトを何度も向けたり、マスクにサングラス姿の警察関係者が住民の顔の正面にビデオカメラを近づけて撮影する素振りを見せたりするなど、「煽り」に近い行為が行われていた。 「今ここでフェンス越しに警察と向き合っているのは、みな近所の住人です。何が起こったか分からないまま、アパートから外に出てきたのです。誰がどこに住んでいるかも分かりますよ。香港政府が主張するような暴徒ではありません。わが子が無事に帰宅できるのかを心配する親ばかりです。これまで警察に対する不信感はあまり抱いていませんでしたが、郊外でなぜこのようなことが予告なしに行われるのか。正直、頭の中が真っ白な状態です」 そう語るのは、現場近くの高層住宅で暮らす女性教員。彼女は目の当たりにした光景が信じられないと、動揺を隠せない状態で、警察による道路封鎖の様子を父親と見つめていた。 5000人近いフォロワーを持ち、ソーシャルメディアで「本小姐」というハンドルネームで、市民デモ関連のニュースを連日拡散するソーシャルメディア・アクティビストの女性は、市民が警察不信に陥った背景をこう推察する。 「警察による過度な力の行使は明らかで、テレビ報道でも分かるように、催涙ガスや催涙スプレーが当たり前のように使用されています。警察による警棒の使用も疑問に感じることはあります。市民が頭部を殴打されて負傷するケースが後を絶ちませんが、そもそも拘束が目的ならば、頭部ではなく、これまでのように頭部以外への使用で問題ないのではと強く感じます。また、暴れていない少数のデモ参加者を大人数の警察官で取り囲む手法も、市民に威圧感を与えることだけが目的のように思えてしまいます。こういった光景はテレビ報道だけでなく、私も旺角エリアで実際に目にしています」 (※)…つちへんに川