日本人の手で新しい日本を 失われた30年でついた差は大きい バランスよい規制緩和を 話の肖像画 元駐米日本大使・藤崎一郎<29>
外国において日本のスカラシップを提供するのがいいと思う。今米国の大学に送るのがはやりだが、ちょっと違う。その生徒が自国のトップクラスの国公立大学に行くことを支援するのである。学費も生活費もはるかに低額で済む。ハーバード大学に1人送る費用で数十人の学生を支援できるのではないか。高専など日本の教育制度の輸出は好評だが、それに加えて大規模に日本国としてこれをやるのである。日本のおかげで大学進学できたという途上国の恵まれない家庭の子女を支援する。もちろん日本国内の学生への支援も充実させながら行う。
《ほかに外国との関係であるか》
大阪万博、横浜国際園芸博を成功させた後はいろいろなイベントのホストに自ら手を挙げるのをやめて、他の国の立候補を助けてはどうか。この60年間に夏冬のオリンピック、パラリンピック2回ずつのほか、ラグビーの世界大会、万博、愛・地球博、花博、海洋博と数年に1度は大きな世界的行事を主催してきた。オリンピックは日本の後はパリ、次はロサンゼルスである。日本がグローバルサウスの味方を標榜(ひょうぼう)するなら、先駆けて途上国開催を支援する側に回ったらどうだろう。
われわれには豊富なソフト、ハードのノウハウがある。これらを提供する。情けは人のためならず、という。このような日本の対応はいずれ評価され、続く国も出てこよう。その先駆けとなるのである。日本の人づくり、海外の人づくりに一層の努力を傾注することが新しい日本づくりになる。また自ら主催せず他国のイベントを助けるという、これまであまり他国もやってこなかったことを開拓することで新しい日本像が結ばれるだろう。日本のいい点を維持しつつ日本自身の手で強化すべきはするという精神で進めていこう。(聞き手 内藤泰朗)=明日からジャーナリスト、 田原総一朗さん