【更年期以降の能力アップ】衰えていくだけじゃない?「中高年からも伸び続ける知能」とは?
40代、50代と歳を重ねるごとに、「人の名前が思い出せない」「頭の回転が遅くなった」など、できなくなったと感じることはいろいろあるでしょう。実際に衰える部分もある一方で、中高年以降も伸び続ける知能があります。経験を積むことでどんどん伸びていく「結晶性知能」です。今回は、結晶性知能とは何か、結晶性知能を伸ばし続けるために今すぐできることについて紹介します。 〈写真〉【更年期世代特有の体臭とは?】女性の加齢臭の原因と3つの対策」 ■人には歳を重ねるごとに伸びる知能がある 先日はこのようなご相談をいただきました。 「50歳になってから疲れやすくなりました。仕事でも物忘れが増え、ミスが多くなりました。若い人にどんどん超されていくような気がします。このまま自分の知能は低下していってしまうんでしょうか。」(50代・女性) このように、40~50代になって、若いころと比べて能力が低下してきたような気がする…というのは、多くの人が感じているのではないでしょうか。一方で、歳を重ねるごとに伸びていく知能もあります。「結晶性知能」と呼ばれるものです。低下していく知能に目を向けて後ろ向きになるよりも、伸びていく知能に目を向けることで、前向きに過ごせるようになったり、その後の人生戦略を練り直したりできるようになり、自分の力が発揮しやすくなるかもしれません。今回は、歳を重ねるごとに伸びる知能「結晶性知能」について説明します。 ■結晶性知能は20歳以降も上昇し続ける そもそも「知能」とは、心理学において「環境に適応し、問題解決をめざして思考を行うなどの知的機能」のことです。(*1)その知能には大きく分けて「流動性知能」と「結晶性知能」の2つあるとされています。(*2) *1 デジタル大辞泉より *2 Horn, J. L., & Cattell, R. B.(1967).Age differences in fluid andcrystallized intelligence. Acta Psychologica, 26, 107-129. 流動性知能とは、過去の経験などに関係なく、その場で瞬発力を持って問題解決をする力のことです。例えば買い物に行って、「これとこれとこれなら1000円以内で買える」といったように、すぐに計算できる力であったりとか、車を運転しているときに「青信号だ! でもあちらに人がいるから気をつけなければ」と認識して安全運転を行うように判断したりなど、認知や判断、操作が瞬発力を持ちながらできるような知能です。つまり、過去の経験にとらわれずに、新しい情報に対してすぐに処理、操作して問題解決ができる力のことを指します。 一方、結晶性知能とは、これまでの経験から問題解決をする力、いろんなことを応用する力です。例えば、人とのコミュニケーション力が代表的です。若いころにはコミュニケーションをとるのが苦手で、言葉足らずで誤解を招いてしまったりといったことがあったかもしれません。しかし、歳を重ねるうちになんとなく相手の気持ちが理解できるようになり、こうしてほしいのかなと想像力を働かせることができるようになることがあります。ほかにも、文学、芸術などにおける表現力も、経験を重ねるごとに高まっていくものでしょう。 流動性知能は10歳代後半から20歳代前半にピークを迎えた後は低下していくとされています。一方、結晶性知能は20歳以降も上昇し、高齢になっても安定していることがわかっています。(*2) ■結晶性知能向上のためにも好奇心を持って日々過ごそう では皆さん、考えてみてください。10年前よりも今の方ができるようになったことはありませんか? 先ほど例に挙げたコミュニケーションの取り方だったり、ものごとをより深く理解できるようになったり、適格な判断が下せるようになったり…。こうした経験に基づく知能を長く伸ばし続けるためには、今から取り組んでおきたいことがあります。それは、好奇心を持ち続けることです。 40~50代の更年期も、高齢になる時期も、子どもの巣立ちをはじめとした家族環境の変化、仕事の状況の変化、体調の変化など、さまざまな変化が起こる時期です。そのライフイベントにおける変化を、新しい挑戦へのきっかけとして捉えたり、新しい情報や活動を積極的に取り入れてみたりすることで、また新しい経験の蓄積につながるでしょう。実際、ある調査によると、新しい経験をすることに積極的で好奇心旺盛な状態であることが、高齢期において結晶性知能を高く保つことと関連しているという結果が出ています。(*3、*4) 更年期も何かとネガティブにとらえられがちですが、英語では「The change of life」すなわち、人生の転機とも呼ばれます。これはつまり、体調の変化をチャンスとして捉え、今後の人生をよりよく変えるきっかけにする、という意味だと思っています。流動的知能の低下を嘆くだけでなく、このあと長い人生、ピンチをチャンスに変え、ぜひさまざまな経験を積み重ねて、結晶性知能を磨いて充実した毎日を過ごしていきたいですね。 *3 健康長寿ネット「高齢期における知能の加齢変化」2024年8月14日更新 *4 西田裕紀子・丹下智香子・富田真紀子・安藤富士子・下方浩史(. 2012).中高年者の開放性が知能の経時変化に及ぼす影響:6年間の縦断的検討.発達心理学研究, 23, 276-286. ライター/永田京子 株式会社ウェルネスシアター代表、ちぇぶら更年期トータルケアインストラクター 1,000名を超える女性たちの調査や医師の協力を経て “更年期対策メソッド”を研究・開発・普及。口コミで広まり、企業や医療機関など国内や海外で講演を行い述べ6万人以上が受講。2018年カナダで開催の国際更年期学会で発表。
永田京子