台湾独立活動に死刑適用も…中国当局の新指針で見えた「価値観の狭さ」
つまり、町中華を拠点に、台湾独立を訴えていた史明さんが、もし存命なら、死刑が適用される可能性もある、というわけだ。さらに、史明さんのような、明確に台湾を独立させるべきだと叫ぶケースだけとは限らない。 今回の中国側の指針発表を受けて、台湾の頼清徳総統がこんな反論をしている。「中国の見解に基づけば、中国との統一に賛成しなければ『台湾独立派』ということだ」。つまり、賛成しない者はすべて独立派――。頼清徳総統が指摘するように、そんな定義も可能だ。 この指針、中国側の強い決意がにじむ。それを説明する記者会見の様子でわかる。指針を連名で発表した5つの組織、具体的には司法省=法務省、警察にあたる公安省、スパイの摘発を担う国家安全省、それに最高人民法院(=最高裁)や最高人民検察院(=最高検)の幹部がズラリと顔をそろえ、6月21日に、北京で会見を開いた。 その記者会見は司法省のホームーページに掲載されている。各組織の幹部が並び、さらに内容を説明する会見の一問一答を載せるという異例の対応をしているのは、ひとつの部署が単独で対処するのではなく、国家を挙げて、対処するという姿勢を示している。この指針は即日、施行された。 ■「国外にいても欠席裁判ができる」 指針は台湾独立阻止を目的とした法律=「反国家分裂法」に基づく。処罰の対象になる行為として、台湾独立を目指す組織の設立、台湾の国際組織への加盟推進などを挙げているが、訴追の対象となる行為の範囲が明確ではない。 それらも驚きだが、「被告」と認定した人物が中国以外にいる場合であれ、いわゆる「欠席裁判」も可能としている点に注目したい。記者会見で、最高人民検察院(=最高検)の幹部がこのように答えている。 “「国家の安全を著しく危険にさらす犯罪に対し、裁判を行う必要があると判断した場合、最高人民検察院の承認を得たうえで、在外にいる被告人に公訴を開始することができる」 「国家分裂の罪の場合、最高刑は死刑。起訴期限は20年と定めている。ただ、国家分裂を目論む犯罪が特に悪質であれば、20年の訴追期限が満了したあとであっても、起訴することができる」”