「九州発祥の地」宮崎県五ケ瀬町の祇園山…「古生代化石の聖地」と言われるだけあり、土砂崩れ跡にはサンゴ化石がごろごろと
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん 【写真】ハチノスサンゴ(季刊奇蟲編集長・外村康一郎さん提供)
今回は恐竜のいた時代よりずっと古い、古生代という時代の話です。九州山地のほぼ中央、宮崎県五ケ瀬町に祇園山(1307メートル)という石灰岩でできた、美しい姿の山があります。一見、何の変哲もない山ですが、太古の地殻変動で九州が誕生したとき最初に海面から“顔”を出した「九州発祥の地」と言われています。私たち化石を研究する者にとっては「古生代化石の聖地」です。 祇園山は、今から4億数千万年以上昔の古生代シルル紀という時代に、赤道近く、南方の浅く暖かい海で堆積した石灰岩で形成されたものが、プレートの動きに伴い、数千キロも北上したと考えられています。 シルル紀の岩塊(がんかい)は、規模の大小はあるものの、日本各地、北は関東山地から、紀伊半島、四国、九州まで、小窓のように点在しています。産地を線でつなぐと、東西千キロもの長さの細い帯状の断層が浮かび上がります。この帯は、最初に地質研究された場所、黒瀬川村(現・愛媛県西予市城川町)にちなみ、黒瀬川構造帯と名付けられています。
祇園山からは、蜂の巣のような六角形の横断面を見せるハチノスサンゴ類や、長いチェーンが連なる形状のクサリサンゴの化石が見つかります。これらは小さなサンゴチュウがすむ小部屋が、床板で仕切られながら積み重なったマンションのような集合体で、床板(しょうばん)サンゴと呼ばれています。 私が初めて祇園山に入ったのは1997年。直前に九州を襲った台風の影響で大規模な土砂崩れがあり、サンゴ化石がごろごろ転がっていました。その微細で美しい構造のとりこになり、足しげく通うようになった結果、98年に新種の床板サンゴを発見。シリンゴポーラ・ウツノミヤイと名付けられました。祇園山には未知の床板サンゴ化石が眠っているのです。 【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2021年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県より」)
南日本新聞 | 鹿児島