“飛ばし屋”は要注意? 「見栄を捨てた時から、本当の自分のゴルフが見えてくるんや」【“甦る伝説”杉原輝雄の箴言集⑧】
見栄を捨てることがスコアアップの近道
ーー「見栄がゴルフをこわすんやな。見栄を捨てた時から、本当の自分のゴルフが見えてくるんや」 ツアーでもいちばん飛ばんボクが、その頃、7000ヤードを超す、ツアー開催コースの中でもいちばん距離の長い橋本CC(1974年、日米対抗)で勝ってるんです。よく不思議がられたもんですが、これこそ見栄を捨てたことが勝利の一因なんや思いますよ。 米国の選手が飛ばすと第2打目はショートアイアン、ボクはロングアイアンになります。これじゃどうにもなりません。一計を案じて、ロングアイアンに代えて5番ウッド(クリーク)にしたんです。敵さんは9番アイアン、ボクは200ヤードをクリーク。クリークを使い始めたんは多分、ボクが初めてやろ。 ともかく、その頃は今のようにフェアウェイウッドやエキストラクラブに市民権はない時代です。ロングアイアンを使いこなすことこそが、プロの証やいう気風がありました。5番クリークなど女子供の使うもんだといわれたました。そやから、クリークを使うのには勇気がいりましたんや。ボクとてプロとしてのプライドがありますからね。しかしアイアンもキャビティなどはなく、鍛造のマッスルタイプですから、ボクら非力のもんにはボールなんか上がりゃしませんよ。 そこでボクは見栄はきっぱり捨て、クリークを作ってもらったわけです。これがまたボクの打ち方に合ったのか、敵さんのミドルアイアンくらいまっすぐ飛ぶんです。敵さんがロングアイアンなら、ボクのスプーン、クリークのほうが正確なわけです。そうなると敵さんは焦ってくるし、首ひねってばかりです。それに飛ばし屋ほど見栄っぱりなんですよ。ようけ自滅してくれました。 見栄を捨てて小が大を喰った例やと、今もそのことを誇りに思っています。 文/古川正則(ゴルフダイジェスト特別編集委員)
みんゴル取材班