海外→J復帰で違和感「日本は遅れている」…腑に落ちた欧州流の指導、選手が「理解できる」【インタビュー】
Jリーグ自体のレベルは「高いと思います」
幼少時代にカナダに住んでいたことから、渡欧してからも語学面では困ることのなかった三竿は、監督たちからの指導をしっかり頭に入れることができていた。欧州にいた期間は1年半と決して長くはないが、そこで得られた知識というのは、決して少なくなかったはずだ。 さらに「そういう視点でサッカーのゲームを見るようになったので、どんどん最新のプレスの行き方だったり、逆にプレスの剥がし方だったりが、どういうやり方で行われているのか、今までとは違う視点でサッカーが見られるようになったので、今は面白いですね」と、自身の中に基準ができたことで、自然と知識がアップデートできているとも語った。 こうした理論をより多くの選手が持ち、自然と実践できるようになることが、日本サッカーのレベルアップにもつながることは間違いない。指導者にも、そうした選手の育成が求められるだろう。三竿は、あるJリーグのクラブが“欧州基準”を実践できていたのではないか、と見解を口にする。 「それをできていたのが、数年前の川崎フロンターレだと思うんです。その選手たちが今、日本代表でも活躍しています。こういう視点でサッカーを見られると、どんどん成長していくのかなっていうふうに思います」 Jリーグ自体のレベルについては「高いと思います。やっぱり全員が走れますし、スピード感もあるサッカーだと思うので。ヨーロッパの方がもう少しスペースがあるなと思う(内田)篤人さんや酒井高徳選手(ヴィッセル神戸)が『Jリーグとヨーロッパのサッカーを比べることはできない』って言っていたのをインタビューで見ましたが、それは本当にその通りだなと思います。Jリーグのやり方をヨーロッパでやっても多分できないし、ヨーロッパのやり方をJリーグでやろうとしても難しいのかなっていうのは感じますね」と語る。 「『日本とヨーロッパで何が違う?』って言われたら、ゴールに向かうスピード感は違うような気はします。ヨーロッパは前を向いて持ったらゴールを目掛けて仕掛けて、シュートなりクロスなりに行くんですけど、日本はわりと相手陣地に1回入ったらボールを持って、時間をかけながら攻めることが多い。日本はサイドに3、4人かけて攻める。でも、ヨーロッパだと、サイドバックとサイドハーフの2人だけでサイドは攻略するイメージがあるので、手数少なくゴールに迫るのがヨーロッパかなと感じますね。どちらが正解というものではないと思うので『JリーグはJリーグ仕様』『ヨーロッパはヨーロッパ仕様』でやるしかないのかなと思います」 ヨーロッパで行われているから絶対に正しいのではなく、それが日本に合うか合わないかの取捨も重要になってくる。それでもどんな環境にあれ、必要なことがあると三竿は断言する。 「結局は個の能力を上げるしかないんだと思います。ヨーロッパに行ったら、組織もありますけど、結局は1対1のバトルっていうところが多いので」 個の力が上がっていけば、現在はサイドの攻略に3人をかけるJリーグでも、将来的には2人で攻略することが主流になるかもしれない。指導者の指導内容の具体化、そして選手の個の力のレベルアップ。飛躍的な発展を遂げている日本サッカーのさらなる進化の鍵は、この2点にあるのかもしれない。 [プロフィール] 三竿健斗(みさお・けんと)/1996年4月16日生まれ、東京都出身。東京ヴェルディ―鹿島アントラーズ―サンタ・クララ(ポルトガル)―OHルーベン(ベルギー)。中盤から最終ラインのポジションをそつなくこなすユーティリティ性が持ち味。キャプテンシーも備え、鹿島ではクラブ史上最年少キャプテンにも抜擢された。
河合 拓 / Taku Kawai