「月100万円」がボーダーライン!? “節税”と“会社の成長”を両立する「役員報酬額」の正解【公認会計士の助言】
個人としての収入もしっかり確保しながらも、余計な税金は払わずに済む「役員報酬の適正額」はいくらなのか……この経営者の悩みに対して、税理士法人グランサーズの共同代表で税理士・公認会計士の黒瀧泰介氏は「月100万円」がひとつの目安だといいます。その根拠とはなんなのか、役員報酬を高く設定した場合と低く設定した場合、それぞれのメリット・デメリットと「適正額」の理由をみていきましょう。 職業別「平均年収」ランキング…<令和4年賃金構造基本統計調査>
お金は「個人」・「法人」どちらに残すべきか?
「お金は個人・法人どちらに残すべきか?」 ……これは永遠のテーマというか、なかなか結論が出ない話です。今回改めて、会社と社長、それぞれに多くお金を残した場合のメリット・デメリットを比較して、どちらに残すべきか黒瀧さんと決めようと思います! 黒瀧氏(以下、黒)「決めちゃうんですね(笑) わかりました。お金を法人・個人のどちらに残すべきかというテーマは、言い換えると「役員報酬をどのように設定すべきか?」という問いになります。 役員報酬の設定には、税金面での有利・不利に加えて、会社の経営方針やプライベートの事情などさまざまな要素が絡んできます。 これらを考慮に入れたうえで、会社と社長のそれぞれに多くお金を残した場合のメリット・デメリットを比較してみましょう」
会社にお金を残すと「税率」で有利
――ではまず、役員報酬をある程度低く抑えて、会社に多くお金を残すメリットというとはどんなものが挙げられるでしょうか。 黒「会社に多くお金を残すと、税率で有利になる可能性があります。法人税についてみていくと、住民税・事業税などをあわせた中小企業の実効税率は約34%です。 一方、所得税はご存知のように累進課税となっていて、控除額を除いて最高税率は45%、住民税10%と合わせると最高で55%にものぼります。 ポイントとなるのは図中5段目の税率が33%に上がるところで、課税所得が900万円を超えると、所得税に住民税を足した税率が法人税率より高くなります。 課税所得899万9,000円までは住民税10%とあわせても税率33%なので法人税34%より低いですが、課税所得が900万円からは所得税33%+住民税10%=税率43%になり、法人税より高くなってしまいます。 この高い税率を払うぐらいだったら、会社に利益を残して法人税を払ったほうが税金的には有利になる、というイメージです」 ――所得税は累進課税なので、個人での稼ぎが多くなるほど、法人税より負担が大きくなってしまいますよね。この場合、会社に多く残したほうが「手取りが多くなる可能性」があるというわけですね。 「融資」が受けやすくなるのも大きなメリット 黒「もう1つのメリットは、融資が受けやすくなる点です。 会社に多くお金を残すことで会社の財務体質を強化し、会社を発展させるための事業基盤をしっかり作ることができます。 内部留保が多ければ一般的に倒産リスクも低いため、金融機関からの信頼が厚くなり、融資を受ける際にも有利に働きます」 ――その融資で新たな事業へ投資を行い、さらに内部留保を拡大していく、という形でよい循環を作ることができますね。 黒「はい。節税することによって手元にキャッシュを残し、それを元手に新たな投資につなげていくことで、会社の基盤を強くすることができます。 ただし、節税のつもりが“ただの経費の無駄遣い”にならないように注意していただきたいですし、ときには、しっかり法人税を納めたほうが財務体質が強くなることも覚えておいていただきたいです」