「ツバメ、死んじゃったって」私の子どもが遭遇した、不審者による「生き物轢き殺し」の無残…その時親として考えたこと
親として不審者の存在をどう伝えるか
「不審者」から身を守る方法を、親は子どもにどう伝えればいいのだろう? そんなことを考えるきっかけになったのは、不審者らしき人物に子どもたちが出会ったことだった。 【写真】大谷翔平の両親が、我が子の前で「絶対にやらなかった」意外なこと わたしたちが暮らしている住宅地のなかの、ちょうど小学生の通学路になっている一角で、ツバメの子どもを見かけたのは最近のことだ。 巣から落ちたのか、ツバメの子どもはヒナと呼ぶには少し大きく、でも翼をばたつかせても数十センチほどしか浮くことができない。ツバメの子どもの上を、家族なのか、五、六羽のツバメが旋回していた。 心配してるのかな。でもどうすることもできないんだろう。住宅地のなかとはいえ、車の往来の絶えないところだ。轢かれてはかわいそうだと、わたしはツバメの子どもに近寄って、道の端まで移動させた。いじめているように見えたのか、ツバメの家族はわたしの頭の上を、威嚇するように飛び回った。 その日の夜に晩ごはんを食べながら、わたしは子どもたちにその話をした。 「学校の行き帰りに見かけたら、車の通らなそうなとこに連れてってやりや」 「うちに連れて帰って面倒見いひんの?」 長女が箸を止めて身を乗りだしてきた。長女は生き物が大好きで、学校では生き物係として合鴨の世話をしている。 「巣から落ちたツバメは、人間が育てたらあかんねん。餌を探して食べたり、巣に戻ったりできる野生の力がなくなってしまうから。落ちたツバメは巣に戻すのがいちばんいいんよ」 巣から落ちたツバメはこれまで何度か見たことがあり、そのたびに近所の人たちと一緒に巣を探して戻した。 でも今回の子ツバメは飛んで移動できていたので、どこの巣から落ちたのかがわからなかった。気にかける以上のことはできない。羽が傷ついているなら、早く治って、飛べるといいな。そう思いながら、翌日から気にかけていた。
「パパならどうする?」
数日後に、また晩ごはんを食べているときに長女が言いだした。 「きょう学校の帰りにツバメがいたよ」 「そうなんや、元気そうやった?」 「それが、行ったときに〇〇ちゃんと▲▲ちゃん(友達)がいてん。それで聞いたんやけど、ツバメ、死んじゃったって」 「えっ!? どういうこと?」 長女から聞いた話はこうだった。 学校帰りに〇〇ちゃんと▲▲ちゃんは子ツバメを見つけて、しゃがんで様子を見守っていたという。 しばらくそうしていると、自転車に乗った男が通りかかった。そして「おい、笑えるな」と言いながら、〇〇ちゃんと▲▲ちゃんの目の前で、子ツバメを轢き殺した。 〇〇ちゃんと▲▲ちゃんは、子ツバメを道の端まで連れていって、落ちていた葉っぱを被せて埋葬した。 長女と次女が通りかかったのは、その直後だった。他にも次々と子どもたちが集まってきて、〇〇ちゃんと▲▲ちゃんからことの顛末を聞いて驚いていた。葉っぱに埋もれた子ツバメに手をあわせている子もいたという。 「パパならどうする?」 長女はためらいがちにそう聞いていた。もしわたしが子どもで、その場に居あわせたとしたらどうするか? と長女は聞いている。 …つづく<親は悩む…子どもに「不審者の危険性」に伝える前に、見落としてしまいがちな「もっとも大切なこと」>では、考え抜いたときに、感じた親としてのひとつ答えを明かします。
仙田 学(作家)