大和証券、太陽光発電のデジタル証券を24年度中に発行へ──日本初、インフラファンドのトークン化【インタビュー】
国内の太陽光発電施設に投資できるデジタル証券の開発を進めてきた大和証券は、関連する法律が8月に施行され、検討中の課題が解決されれば、2024年度中にも同証券の発行と個人向け販売を開始する。同社デジタルアセット推進室長の斉藤貴裕氏が明らかにした。 大和証券は、同社グループの大和エナジー・インフラが保有する複数の太陽光発電施設を裏付け資産とするファンドを証券化し、小口化したその証券をブロックチェーン上で「セキュリティ・トークン(デジタル証券)」として販売する計画を進めてきた。 現在の金融商品取引法の下、金融機関が自社グループの資産を受益発行信託のスキームで証券化した際、引受主幹事を務めることはできない。しかし、「改正された業等府令が施行されれば、(大和証券は)計画を前に進めることができる」と斉藤氏は話す。 太陽光発電施設に紐づくデジタル証券の発行は、実現すれば国内では初となる。
金融界、政府、東京都が火をつけるデジタル証券ブーム
ブロックチェーンは、ビットコイン(BTC)の誕生によって世界的に広く知られるようになった基盤技術だが、欧米や日本の金融機関や事業会社はこの技術を有効活用する方法を探ってきた。日本の既存金融機関が最も積極的に進めてきたブロックチェーンの利用方法は、デジタル証券の開発だ。 2020年に金商法が改正され、デジタル証券(セキュリティ・トークン)は法律上「電子記録移転有価証券表示権利等」と定められた。証券会社などの金融商品取引業者で取り扱いができるようになり、大和証券に加えて野村証券やSBI証券、ソニー銀行、三井物産デジタルアセットマネジメントなどがこの新たな市場に参入してきた。 東京都は、事業者がデジタル証券を通じて資金を調達できる環境を整備するため、同証券を発行する都内の事業者向けの補助金まで用意した。 関連記事:東京都、セキュリティ・トークン(デジタル証券)に関する補助金の受付開始 大和証券によると、2023年度に国内で発行されたデジタル証券は約980億円。そのうち、不動産に紐づくもの(不動産ST)は800億円を超えた。 野村ホールディングスの子会社で、デジタル証券の発行基盤を開発するブーストリー(Boostry)は、2024年度の発行総額を1700億円と予測する。内訳は、不動産STが1200億円で、社債に紐づくデジタル証券が500億円。