被災地出身の自負、力に 天理・松川大輝選手(2年) 「周りを勇気付けたい」 /奈良
<センバツ2020> 19日開幕予定のセンバツに出場する天理に、東日本大震災の被災地・宮城県石巻市出身の選手がいる。2年生の松川大輝捕手。当時は小学生で被災後、センバツで活躍する地元選手の姿に励まされた。松川選手は今回はベンチ入りを逃したが、「被災地出身として自分も周りを勇気付けたい」と意気込む。【小宅洋介】 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 松川選手は震災当時小学2年生。学校で帰りの準備をしていた時に、突然大きな揺れが起きた。蛍光灯や花瓶が割れ、泣き叫ぶクラスメートの姿が今でも目に焼き付いている。学校の体育館は避難所になり、プールから体育館までバケツリレーで水を運ぶボランティアにも加わった。 食料も不足し、一袋のクリームパンを数人で分け合うこともあった。自宅は損壊を免れたが、電気や水も止まり、家から3キロ離れた給水所まで水をくみに行く毎日が続いた。 生活が混乱する中、当時所属していた地元リトルリーグのチームでも退団者が相次いだ。練習も満足にできない中、松川選手も小学生ながら「野球を続けている場合ではないのでは」と感じ一度は野球をやめようと思った。 大きな転機になったのが、震災1年後の2012年に開かれたセンバツだった。21世紀枠として出場した地元の石巻工、阿部翔人主将の選手宣誓に衝撃を受けた。 「日本中に届けます。感動、勇気、そして笑顔を」「我々、高校球児ができること、それは、全力で戦いぬき、最後まであきらめないことです」 松川選手は「苦しい経験を味わった選手たちが、野球を通して他人を励まそうとする姿に憧れた」と振り返る。「自分もいつか選抜に」。一度は辞めかけたチームに再び合流。天理の中村良二監督からの誘いで入学し、現在は寮生活を送るが、「被災地出身」の自負は忘れたことがない。「自分はいろいろな方の恩を背負って野球ができている」。今回もチームのためにできることを全力でするつもりだ。