EVP兼CROに聞くシトリックスの今--再び成長軌道を目指す
Citrixのソリューションポートフォリオ 現在のCitrixのポートフォリオについてLima氏は、NetScaler製品を中核として、アプリケーションへの接続に必要なさまざまな機能を組み合わせていると説明した。例えば、一例として挙げられたのが「Enterprise Browser」だ。Enterprise Browserは企業でのセキュアアクセスを目的としてカスタマイズされたウェブブラウザーで、管理機能やセキュリティ機能が強化されている。最近注目が高まりつつあるソリューションだが、同社でもいち早く対応した形だ。 ゼロトラストを実現するセキュアプライベートアクセス製品も用意しており、各種の仮想化関連製品も健在だ。 同社のウェブサイトで現在のポートフォリオを見ると、「Citrix App and Desktop Virtualization」「Performance Observability」「Security Analytics」「uberAgent」「XenServer」「Citrix Secure Private Access」「Citrix Enterprise Browser」「Citrix Endpoint Management」「NetScaler Application Delivery and Security」が紹介されている。 これらの製品を組み合わせたプラットフォームによって、アプリケーションデリバリーインフラストラクチャーを構築するのが現在のCitrixの立ち位置である。オンプレミスアプリケーションなどにも包括的に対応するプラットフォームではあるが、あえて単純化するならSecure Access Service Edge(SASE)製品とよく似た位置付けと理解してよさそうだ。 Lima氏は現時点での競合企業として、VMwareのエンドユーザーコンピューティング(EUC)部門が事業分割されて成立したOmnissaの名前を挙げたものの、同社の事業はVDIを含むEUC事業に特化しているため、SASEを含めて広範なポートフォリオを有するCitrixの方がユーザーニーズに合致するはずとの認識も示した。 日本市場への期待と取り組み Lima氏は日本市場について「もともと日本はCitrixにとって巨大な市場であり、世界最大規模の顧客が日本企業ということもあり、日本とは縁が深い。日本の顧客企業の多くは仮想化製品に加えてNetScaler製品も組み合わせて活用しており、製品導入を拡大するつもりだ」と語った。 日本市場では現在年率11%ほどの成長を記録しており、今後は既存顧客に加えてパートナーとの連携も深めていくという。同氏は急速な成長を追求するつもりはないとも明言しており、持続的で健全な成長率として1桁台後半の数字が達成できれば十分とした上で、国内の顧客企業と持続的で健全な関係を築いていくことを重視する姿勢を見せた。 Lima氏は「Citrixはどこにも行かないし、ずっとここにいた」と力強く語って日本市場を重視する姿勢を改めて強調した。その上で「Citrixは今でもEUCのリーダー企業であり、その上でさらにプラットフォームの拡張を続けている」と語り、「われわれのEUCプラットフォームは、あらゆるタイプのアプリケーションをサポートする。顧客企業の課題解決に寄与する技術の開発に投資し、最良のソリューションとサポートを提供する」と宣言した。 Windowsのネットワーキングサポートがさほど強力なものではなく、ユーザーのIT環境もオンプレミス中心で膨大な数の業務端末の運用管理が深刻な課題となっていた時代にCitrixは大きな支持を集め、圧倒的なシェアを確保していた。しかし、その後クラウド時代に突入したことで、ネットワーク経由でリモートのアプリケーションやリソースにアクセスすることが当たり前となり、同社の事業ポートフォリオにも影響を与えた。 とはいえ、「EUC」を掲げ、働く人が時間や場所に関係なく企業アプリケーションにセキュアに接続できるようにする、という基本的なコンセプトの部分は一貫しており、その実現のための技術要素が時代に応じて変わってきている印象だ。企業買収に伴って一時期は情報発信が途絶えていた同社だが、日本市場での堅実な事業展開に期待したい。