あか牛オーナー制度20年 都市と農村の住民連携 阿蘇市で記念講演会と交流会
公益財団法人阿蘇グリーンストックの「あか牛オーナー制度」が今年、20周年を迎えた。1口30万円で出資したオーナーには5年間、牛肉などを送り、集まった資金は農家にあか牛導入資金として無利子で貸与。阿蘇の野草を食べるあか牛の頭数を維持、拡大することで、草原の保全につなげている。 オーナー制度は2004年に始まり、これまでに熊本県内外の388人が登録。227頭の繁殖牛が導入された。農家は生まれた子牛の売却益などで、5年以内にグリーンストックへ借入金を返済する。 グリーンストックによると、繁殖牛1頭から10年間に生まれる子牛はおおよそ10頭。これまで計2千頭以上生まれた計算になるという。20年前に約20万円だった子牛価格が値上がりしたため、23年以降は1頭当たり2口60万円を農家に貸し付けている。 あか牛1頭は1日約40キロの草を食べるとされ、導入された牛の放牧で多くの草原が維持されている。オーナーは牛の名付けや見学、触れ合いのほか、畜産農家と交流することもできる。制度は都市と農村の相互理解にも一役買っている。
ただ、20年で畜産農家の理解は進んだが、新規オーナーの登録者は伸び悩んでいるという。グリーンストックの山本保孝さんは「制度への理解と参加の周知に力を入れたい」と話す。 10日は制度20周年を記念し、阿蘇市にあるグリーンストックの簡易宿泊施設「阿蘇ゆたっと村」で講演会と交流会があった。阿蘇の世界農業遺産登録に貢献した熊本市の飲食店オーナーシェフ宮本健真[けんしん]さんが講演。「消費者は肉を食べて農家を応援しよう」と呼びかけた。 宮本さんは網で豪快にあか牛肉を焼いて調理し、集まったオーナーとその家族ら約50人が味わった。オーナーと野焼き支援ボランティアを続けている大津町の牧島英勝さん(81)は「阿蘇の草原にはあか牛が似合う。これからも支援をしていきたい」と話した。(宮崎あずさ)