「仕事の完遂」をつねに「美徳化」する上司の盲点 優秀なリーダーが「仕事を区切る」3つの理由
「この作業、続けても無駄だよな」と思っているのに、同じことをいつまでも続けざるをえない状況になったことはないだろうか。 作業の過程で環境が変化したり、もう結果が出ないと判明したのに同じことをし続ける組織は要注意だと、米海軍の原子力潜水艦「サンタフェ」で艦長を務めたマルケ氏は述べる。 では、チームが適切な方向へ軌道修正していくためには何が必要なのか。 マルケ氏がまとめた、リーダーの「言い方」についての指南書『最後は言い方』から紹介しよう。 【写真を見る】『LEADER’S LANGUAGE』が読みやすくなって新登場
■「作業の完遂」は何より重要だった 産業革命期のやり方というのは、赤ワーク、すなわち生産作業に最大限の時間を費やすためにできたものだ。 要するに、組立ラインが中断なしに動き続けることが重要ということだ。 現代の管理職は、いまなお同じやり方を踏襲している。 時間を厳守することから始まって、やるべきことを部下に強要して服従させ、できるだけ長く赤ワーク(生産作業)を続けさせることが当たり前になっているのだ。
そんな管理職にとって、時間あたりの生産性を最大にすることは絶対であり、組立ラインの停止に象徴される赤ワークの中断は、時間と資源の無駄を意味する。 生産行為を長く続けさせる手段のひとつが、中断を発生させないように、中断することへの障壁を構築することだ。 産業革命期のやり方から抜け出せずに沈没した貨物船エルファロの高級船員たちは、なぜ最適なルート変更ができなかったのか。 この問いの答えが、中断を阻む障壁だ(エルファロについてはこちらの記事も参照)。
私たちの身体には、続けることが染みついている。 生産ラインで働いている人は、一単位の仕事が完了しても、作業を続行する。作業は永遠に繰り返され、区切りがつくという感覚はいつまでたっても生まれない。 ■区切りをつけられない構図 例をあげよう。 サービス産業で、新しいパンフレットの草案をようやく作って上司のところへ持っていくと、上司から「よし、ここを少し変えてくれ」と言われる。これも続行だ。 小売企業で、ウェブサイトの試作版を懸命に作成し、少数のモニター顧客にチェックしてもらえるようにしたとたん、上司から「で、次のアップデートはいつ?」と尋ねられる。これもまた続行だ。