『MODERN TIME』を聴くと感じる、吉川晃司が同世代の頭目である理由
OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』のアーカイブス。今週は吉川晃司の『MODERN TIME』を取り上げてみたい。 ※本稿は2019年に掲載
意外に多い65~66年生誕の音楽家
1965~1966年生まれ、当年とって53~54歳の有名アーティスト、ミュージシャンの何と多いことか。少し調べてみたら、その前後の1964年や1967年生まれの人たちに比べて、ちょっと極端かなと思えるほどに多いようである。まず、先週の当コラムでメジャーデビュー作を取り上げた怒髪天の増子直純をはじめ、筋肉少女帯の大槻ケンヂ、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉、ウルフルズのトータス松本、JUN SKY WALKER(S)の宮田和弥、ORIGINAL LOVEの田島貴男、さらに斉藤和義、スガ シカオらが1966年生まれ。この所謂“丙午生まれ”の人たちは同い年同士、余ほど気が合う様子で、2006年、2016年には彼らが結集してイベント『ROOTS66』を開催したほどだ。1965年生まれは、我々の目に見える範囲では、その人たち同士の交流は少ないように思えるが、現在も日本の音楽シーンを牽引する顔触れが揃っている。以下ザっとその名を挙げると──。X JAPANのYOSHIKI(年齢はXXだがTOSHIと同学年ということで)、TOSHI、PATA。DREAMS COME TRUEの吉田美和。UNICORNの奥田民生、堀内一史。BUCK-TICKの櫻井敦司、今井寿(※註:櫻井は1966年生まれだが、所謂早生まれで、1965年生まれと同学年)。TUBEの前田亘輝。そして、岡村靖幸、浜崎貴司、森友嵐士ら、こちらもそうそうたる面子だ。 1965~1966年生まれのアーティスト、ミュージシャンが多いのは、たまたま…と見る向きもあろうが、おそらくそうではないと思う。ここからは筆者の想像なのでその旨をご承知でお読みいただきたいのだが、そこには俗に第2次バンドブームと言われる社会現象の影響があったと思われる。1980年代半ばからのレベッカ、BOØWY、プリンセス プリンセスの特大ヒットを経て、通称“イカ天”=『三宅裕司のいかすバンド天国』がそれを決定付けたバンド人気。レコード会社もマネジメント会社も当時こぞってバンドをデビューさせた。[1991年には歴代最高の510組のバンドがメジャーデビューした]というから([]はWikipediaからの引用)、話をレベッカ、BOØWY のブレイク直後にまで広げたら、この時期には相当数のバンドやバンドに準じるアーティストが世に出たであろう。 1965~1966年生まれは、1985年に19~20歳、1990年には24~25歳。アイドルであれば少し薹(とう)が立っていると思われる年齢であったろうが、自作自演の音楽家としてはいい頃合いである。この世代のアマチュアミュージシャンに音楽関係者の注目が集まったのは自然のことだったと言える。バンドブームの最中にデビューした人たちはその後、時代の流れと共に多くが淘汰されていったが、そもそもその母数が多いわけで、秀でた人たちも多かったということだろう。優秀であるから息も長い。だから、凡そ30年間が経過しても現役であり続けられた。今も活躍する1965~1966年生まれのアーティスト、ミュージシャンが多いのはそういうことではないかと思う。