【松本まりかさん(40)】美談にしたくない下積み時代「“遅咲き”だからこそ伝えたいことがある」|STORY
透明感溢れる美しさとキュートさが共存し、唯一無二の圧倒的な存在感を放つ女優の松本まりかさん。2018年に「あざとかわいい」でブレイクし、40歳を目前にしてゴールデン・プライム帯でドラマ初主演を果たした後も、輝きを増しながら快進撃を続けています。決して華々しい女優人生ではなかったと語る松本さんに、スポットライトを浴びるまでのこと、40歳を前に起こった心境の変化や恋愛観など、ありのままの人生について語っていただきました。 【写真あり】透明感溢れる美しさ...松本まりかさん(40)
このチャンスを掴めなかったら、応援してくれた人達に申し訳ないと思った
ドラマ「ホリデイラブ」に出演した2018年以降は、取り巻く環境がガラッと変わりました。業界にいた年数だけは長かったので、このチャンスをつかめなかったら、私はお世話になったたくさんの方に顔向けできないと感じて。今まで私を応援してくれた人達に申し訳ないし、そんな愚かなことはできないと思ったんです。 「とにかく今は知名度を上げる時だ」と覚悟を決めて、多くの番組に出演させていただき、忙殺される5年間を過ごしました。そんな目まぐるしい変化の中で、まだまだ発展途上の未熟な自分の言葉が、想像以上の影響力を持って広がり始めているという事実も知りました。「インタビュー記事を見て、心が救われました」と言われる度に、責任の大きい仕事なんだと痛感。だけど、急激な立場の変化に自分の気持ちが追いつかず、戸惑うことも多々ありましたね。
拭えなかった空虚感、39歳で巡り会えたドラマ主演が見える景色を変えてくれた
注目されるようになってからの5年間は、気持ちは置き去りのまま沢山の仕事をしていました。正直、“これが求めていた幸せなのかどうか”もわからず、心から笑えることも無かったんです。多忙な毎日を過ごしていても「幸せも感じられなければ、笑顔にもなれないんだ」と気づいてからは、「何かが足りない」という空虚感をずっと抱えていました。 そんな時、人生をもう一回見つめ直したい、本質を捉えてからスタートしたいと思ったタイミングで出会えたのが、ドラマ『ミス・ターゲット』。役者になって24年、40歳を目前にして初めて決まった、ゴールデン・プライム帯枠での主演でした。現場を統率できるわけでも、演技がずば抜けて上手なわけでもない。そんな私が主演を務めるのであれば、「誰よりもこの役に向き合っている」という自負を持つために努力するしかない。現場に集まっているメンバー全員が生き生きと、本当にやってよかったと思えるドラマにしたかった。だから撮影が始まるまでの数ヶ月、自分が捧げられる時間は全て演技の勉強に振り切りました。 役作りは“セリフの読解”で、台本の本質を読み解いていくこと。監督に意見を聞いたり、役者の友人にセリフ合わせに付き合ってもらったりしながら、「なぜこの人は、このタイミングでこんな発言をするんだろう?」と何度も討論しました。言葉の表層を拾うことはできますが、セリフの奥にある本当の想いや人物の心情を理解すると、前後のシーンの表情、間の取り方、役者同士の距離感などが全然違ってくるんです。今まで感性を頼りに芝居をしてきたので、それは甘えだったなと。1から勉強し直して、役を徹底的に掘り下げました。 そんな風に取り組んだら、すごく愛に溢れた現場になって、人を笑顔にする作品になったことを実感したんです。そして39年間生きてきて、初めて心から幸せを感じることができました。それまでは、愛とか夢とか、そういうことを斜に構えて捉えていたところもありましたが、「目の前の人を幸せにして、笑顔にしたい」と素直に思えるようになった。それは私にとって大きな変化でした。真っ向から作品に向き合い、経験の全てをつぎ込んで挑んだからこそ見えた景色だと思っています。