3兆円企業「シーイン」がブチ壊した世界のアパレル会社の常識…「デザインから生産完了まで3日」衝撃の製造プロセスはなぜ成り立つ?
アマゾン、ヨドバシ、アスクル…… 最先端の物流戦略 #1
物流の最新事情に精通する著者が優良企業の物流戦略と、それを可能にする仕組みを紹介した書籍『アマゾン、ヨドバシ、アスクル…… 最先端の物流戦略』。 【図】ザラとシーインの製造プロセス比較 本書より一部を抜粋・再構成し、米国での上場間近といわれ、若者の心を捉え続けている中国発のアパレルネット通販サイト「SHEIN(シーイン)」の驚きの戦略を明らかにする。
どのようにして、「シーイン」は3兆円企業に急成長したのか?
この章の最後に、米国企業ではありませんが、3兆円を超える売上のほとんどを米国内で稼いでいる企業を取り上げたいと思います。 ファストファッションを手掛けるオンライン小売り大手シーイン(SHEIN/米国人の発音だとシェインに聞こえます)です。中国発の企業ですが、現在、本社をシンガポールに移しています。 2022年の売上高は290億ドル(日本円で3兆円以上)、純利益は10億ドル(同1000億円超)。ちなみに、ユニクロを展開するファーストリテイリングの売上は2兆7665億円、当期利益2962億円(2023年8月期)です。 米国内では、このシーインがいつ米国で上場するかに注目が集まっており、まもなく上場すると言われています。 シーインは3000万人近いインスタグラムのフォロワー(2023年7月時点で2945万人)を抱え、ティックトックやユーチューブでも注目度の高いブランドです。 同社の特徴に、圧倒的なアイテム数と、低価格があります。 毎日3000~5000点が新たに追加され、2022年5月31日には1日だけで、2万5077点もの新規アイテムが投入されました。ファストファッションで世界№1のザラでさえ年間で2万5000点の新規投入がせいぜいですから、シーインのアイテム数がどれだけのボリュームになっているのか、よくわかると思います。 また、日本円換算で2000円以下の商品が9割近く、3000円以下になるとほとんどすべての商品が含まれるとも言われています。 こうした圧倒的なアイテム数、低価格での販売を可能にしているのが、オンデマンドでの生産を実現するシステムです。リアルタイムで全製造過程を連携できるITシステム(MES:Manufacturing Execution System、製造実行システム)によってサプライヤーをつなぎ、在庫を極限までに削減することを可能にしています。デザインから生産までの流れをおおまかに説明すると、 ●アプリやその他のチャネルからトレンドや顧客ニーズを収集し、AIなどで分析。それらをもとにサプライヤー所属のデザイナーがデザイン案を作成 ●シーインのバイヤーにデザイン案の画像を送り、OKが出ればサンプル作成にとりかかる ●サンプルの完成までに2、3回の修正指示が入るのが通常で、正式なオーダーが入ったら3日以内に納品(5日以上かかると取引停止の可能性がある。追加注文が入った場合は9日以内に納品) という具合になります。