「この本に出合うため5000冊以上読んできた」。名もなき読書家の人生観を変えた、紀里谷和明の本
世の中には「読書のプロ」といえる人が存在する。そのひとりが、『失敗しない読書術』の著者である名もなき読書家さん(以下、読書家さん)だ。 ▶︎すべての写真を見る 今回は、読書家さんに、プライベートで読破した5000冊以上のなかで、最も感銘を受けたという1冊を紹介しよう。
クリッピングという仕事で“読書のプロ”に
名もなき読書家さんの職業はクリッピング。クライアントから依頼を受け、新聞や雑誌から必要な記事を探し出したり情報収集したりする仕事だ。文章をスピーディかつ正確に理解するためのトレーニングとして、プライベートでも読書を習慣づけていたところ、ハマってしまったという。
記録用にInstagramで読んだ本を投稿するようになり、今では4万人以上のフォロワーを持つようになった。そんな読書家さんが、これまで読んだなかでも特に思い入れが強い1冊がある。 「映画監督としても活躍する紀里谷和明さんの『地平線を追いかけて満員電車を降りてみた』(文響社)という本です。今までたくさん本を読んできましたが、この1冊、フレーズに出合うために読書してきた、といえる本です」。
登場人物を自分に投影、没入しながら気付きを得られる
本のあらすじ とある街の路地裏に、「出会えれば誰もがしあわせになれる」と噂される不思議な劇場が存在する。成功したい営業マン、有名になって愛されたいフリーター、やりたいことがわからない会社員、自分に自信が持てないフリーランス、結果が出せずに焦っている女優など、悩みを抱えた男女が一人ずつ訪れ、劇場の支配人との対話を通じてそれぞれが自身と根本的に向き合っていく物語。対話形式で進められていく自己啓発小説。 「物語には、“出会えれば誰もがしあわせになれる”謎の劇場の支配人が出てくるのですが、実は紀里谷さん自身が支配人であり、同時に相談者でもあるのです。 それってどういうこと? と思われるかもしれませんが、読んでいただければ『なるほど』と納得できるはず。世界で活躍される紀里谷さん自身の苦しかったことや自身と向き合った経験、実話を基に創作した本なのです。 支配人は物語のガイド的な役割で、章によって主人公(相談者)が変わり、悩みのテーマもそれぞれ。成功したい人ややりたいことがわからない人、仕事がうまくいかない人などが支配人と対話をして気付きを得ていく……という内容ですが、誰もが考えたことがあるだろう悩みにリンクするので、読み進めるごとに主人公の悩みが自分のことのように思えるのです」。 物語は基本的に支配人と各章の主人公との対話形式で進んでいくため、まるで目の前で会話が繰り広げられているような没入感も得られる。