「ドイツにとってユーロ安すぎ」メルケル首相発言の波紋と今後のECBの動き
今後、今年後半にかけてドイツを中心にユーロ圏のコア物価が上昇していくようだと、ECBの金融政策はその自由度が一層低下することが見込まれます。ECBの資産購入(月あたり600億ユーロを2017年12月)を巡っては、市場関係者の多くが、段階的縮小を伴った延長をメインシナリオにしているとみられますが、ドイツの反対次第では、思いのほか早期に資産購入が打ち切られるとの見方が生じても不思議ではありません。資産購入終了までの残り時間が半年を切る6月頃にそうした懸念が表面化する可能性があります。 ここ数年、連邦準備制度理事会(FRB)の引き締めによる緩和縮小(観測)を、日銀とECBの金融緩和が補ってきた経緯を踏まえると、ECBの緩和縮小(停止)が世界的な金融市場に打撃を与える可能性は否定できません。FRBのQE3発動前後にあたる2012年から13年頃にかけて、FRBのバランスシート規模で米国株上昇を説明するチャートが流行したことを踏まえると、中銀のバランスシート(≒資産購入額)を重視する向きが多く存在するのは事実です。米国では、FRBのバランスシート縮小に向けた議論が具体化するなか、ECBの量的緩和縮小にも注意を払いたいところです。 (第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※参照:FRBのバランスシートについて
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