構想中のミュージカル楽曲を豪華俳優陣が披露 東宝企画・ミュージカルクリエイター育成プログラムの成果発表
ミュージカル『ネクスト・トゥ・ノーマル』の萌芽は、NYのミュージカルワークショップに参加したソングライターコンビが、10分間の小品を創作する課題を与えられたことを機に生まれたものだという。ブロードウェイで活躍する作家や音楽家の経歴を辿っていると、同様のワークショップや育成プログラムの出身者が数多く、日本でもそういうものがあったらいいなと常々なんとなく思っていた。12月18日、奇しくもまさに『ネクスト・トゥ・ノーマル』を上演中のシアタークリエで開催されたのが、筆者の「あったらいいな」が実現した育成プログラムの成果などを発表する『Songwriters’ SHOWCASE』である。 【全ての写真】『Songwriters’ SHOWCASE』より 今年8月、日本のミュージカル界をリードする東宝が企画・制作し、一般社団法人 映画演劇文化協会が主催した「Musical Theater Writing Program」。ミュージカルクリエイターを目指す14名の受講者が3週間にわたり、韓国芸術総合学校から招かれた講師のもと、ミュージカル作劇・作曲の基礎と応用を学んだ。その受講者から選抜された3組と、韓国・イギリス・アメリカの各育成機関から派遣された各3組が、構想中のミュージカルの楽曲を1曲ずつ披露したのが『Songwriters’ SHOWCASE』。上田一豪が構成・演出を手掛けた公演は、井上芳雄による流暢な司会のもと、まずはクリエイター本人が登場して自ら作品内容をプレゼンし、その上で日韓から集った豪華俳優陣が楽曲を歌う形で進められた。 計12組がプレゼンしたのは、物語テーマも楽曲スタイルも実に様々な12作。たった数分間の説明と1曲のみの発表からミュージカルの全体像を想像することは当然ながら容易ではなく、この中から実際にミュージカル化できる企画を見つけようとやって来たプロデューサーたちにとっては、想像力が問われる刺激的な時間だったに違いない。一方、一般観客にとっては井上や中川晃教ら歌ウマ俳優たちの新曲歌唱が楽しめる一夜限りの特別なコンサートで、またソングライター志望者にとっては、ミュージカルとはこんなにも幅広い題材と音楽を扱い得るジャンルなのだと開眼する機会となったはず。今後たとえば配信などによってこの“見本市”に触れられるプロデューサーも観客もソングライター志望者も増えれば、三者の相乗効果で日本ミュージカル界は大きく発展するだろう。 いつの日かこの「Musical Theater Writing Program」と『Songwriters’ SHOWCASE』から上質な日本オリジナルミュージカルが生まれることを楽しみにしつつ、まずは日本ミュージカル界が大きな一歩を踏み出したことを寿ぎたい。 取材・文:町田麻子 <公演情報> 『Songwriters’ SHOWCASE』 構成・演出:上田一豪 参加作家・作曲家 [日本] 上野窓 広田流衣/翠嵐るい 桑原まこ/大德未帆 竹内秀太郎 [韓国] イ・チャンヒ イ・ナレ/イ・レア ソン・ボンギ/ハン・チアン ハ・テソン [アメリカ] アディー・シモンズ アダム・ラポート/アビー・ゴールドバーグ メイソン・マクドゥエルク/レア・フユコ・ビアマン エリカ・ジィ [イギリス] フィン・アンダーソン/リオ・マーサー/レイチェル・ベルマン 出演 井上芳雄(MC) イ・チュンジュ 霧矢大夢 シルビア・グラブ 田村芽実 ダンドイ舞莉花 チェ・ナヘ 中川晃教 遥海 矢崎広 吉高志音 2024年12月18日(水)※公演終了 会場:東京・シアタークリエ