「コイルを巻くのは職人」 レコード用カートリッジ 長方形コイル開発で出力向上 オーディオテクニカ
長方形のコイルは職人による手作業――。オーディオテクニカは、レコード針(スタイラスチップ)の直上に発電コイルを配置し忠実な再生を実現したダイレクトパワーステレオMCカートリッジ「AT-ART1000」の後継モデル「ART1000X」を12日に発売する。価格は税込み77万円。新開発の長方形コイルを採用したことで出力電圧が上がり、低域の再生能力を高めた。 【関連写真】“職人技”で長方形コイルを巻き、音質を高めている ART1000は、発電コイルをレコード針の真上に置く独自のダイレクトパワー方式を採用する。針先と発電部をつなぐカンチレバーの根本にコイルを置く従来型では表現が難しかった音の細部まで描写できるのが特徴だ。後継となるART1000Xは出力電圧の向上を目指し、長方形コイルを開発することでそれを実現した。 長方形コイルはART1000の丸型コイルと比べて一定の音溝への変位に対し大きな磁束の変化量が得られるため、出力を上げられる。これにより低域の周波数の広がりと高解像度での描写ができるようになった。 コイル材は、直径20マイクロメートルのPCOCC(単結晶状高純度無酸素銅)線を採用。1.1×0.6ミリメートルの長方形で8ターン巻いた空芯コイルだ。 コイルは同社の職人が手作業で巻く。商品開発部の小泉洋介マネージャーは「職人の技術力により長方形でコイルを巻けるようになった」とみる。組み立ては東京・町田の本社で行う。 新製品はカートリッジ側をねじ切り仕様に変更。これまで貫通穴を採用していたが、ねじ切りにより付属のねじのみでカートリッジを直接固定できる。 音質について小泉氏は「現行品の響きはクールになる印象だが、新製品は音にも体温を感じる良さがあり、音が前に出てくる」と説明し、より幅広い音楽ジャンルが楽しめるとした。
電波新聞社 報道本部