徴兵逃れのウクライナ人、命懸けでルーマニアへ
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【7月1日 AFP】ルーマニア北部の残雪に覆われた山岳地帯で、レスキュー隊員はウクライナ人男性(21)の震える声を聞いた。軍の動員対象年齢が引き下げられた母国から、山を越え川を渡り命懸けで脱出しようとする若者の一人だった。 「とても寒い」と、男性は訴えた。5月でも雪が残る急峻(きゅうしゅん)な山々を3日間歩き続け、腰を痛めていた。 マラムレシュ(Maramures)山岳救助隊のダン・ベンガ(Dan Benga)隊長はAFPに、越境者は「戦争未経験で、前線行きを恐れている若者」だと語った。 「彼らの多くが、戦場で死ぬより山に逃げて死んだ方がましだと言っている」 ウクライナは兵士の補充のため、法改正により動員対象年齢の下限を27歳から25歳に引き下げた。 これ受け、ルーマニアに逃れるウクライナ人が急増。ルーマニア国境警察によると、今年1~4月の越境者はほぼ2500人と、前年同期の倍になった。 彼らは山で凍死するか、国境沿いを流れるティサ(Tisa)川で溺れ死ぬリスク覚悟でやって来る。 今回救助された男性は、今年に入って救助されたウクライナ人としては37人目。ロシアによる侵攻開始以降では、累計100人超が救助されている。 ただし、救助が間に合わない場合もある。 高地で雪に埋もれた2人の遺体が見つかったとの報告もあった。2人とも身分証明書を所持しておらず、荷物も見当たらなかった。 ベンガさんは、2人はほぼ1か月前に行方不明になったとされるウクライナ人だとみている。 「悲劇だ」と、ベンガさんは語った。越境者の装備は貧弱で、「着替えや食糧も携行していない」ことが多いという。 侵攻開始以降、23人のウクライナ人の遺体がルーマニア領内で見つかっている。 そのうち13人は川から引き揚げられた。山越えより渡河の方が時間を短縮できるが、水は冷たく流れが速いため、危険を伴う。 ベンガさんは、雪解けが進めばさらに多くの遺体が見つかるのではないかと懸念している。 ウクライナ人男性たちはルーマニアに入った後、入国管理センターに行けばウクライナ避難民に与えられる一時的な保護を申請できる。 あるセンターの責任者は「手続きは5分ほどで終わる」と話した。 侵攻開始後、18歳から60歳までのウクライナ人男性は基本的に出国を禁じられたが、ルーマニアの国境警察によると、侵攻が始まって以降、同国人男性1万2000人が入国している。 映像は2024年5月撮影。(c)AFPBB News