宮市は今季こそアーセナルに生き残れるか?
アーセナルでのプレー時期尚早
左タッチライン際でボールを持つたびに、埼玉スタジアムを埋めた4万人の観衆から大声援を浴びた。その視線の先には、宮市亮である。 インドネシア、ベトナム、そして日本を回るプレシーズンマッチ「アーセナル・アジアツアー2013」の対浦和レッズ戦。中京大中京高の3年生だった2010年12月に、プレミアの名門、アーセナルと契約を交わした宮市にとって今季が4シーズン目である。これまで他クラブへのレンタル移籍を繰り返し、武者修行を積んできたFW宮市亮は、今季こそ念願の居場所を築くことができるのか。 今回のツアーに帯同しているイギリス人のアーセナル担当記者は3人しかいなかったが、彼らに、その可能性を尋ねてみた。異口同音に返ってきた答えは、「今度もまたレンタル移籍で出されるだろう」というもの。 約340万部と英語日刊紙では世界最大の発行部数を誇る『The Sun』のマーク・アーウィン記者は「リョウにはもっと経験が必要だ」とこう続ける。 「アーセナルには彼と同じ左ウイングでプレーできる選手が大勢いる。チームに残れば、残念ながらリョーを試合で見る機会はなかなか訪れないだろう。他チームで実戦での経験を積むことはもちろんだが、実戦を通じてフィジカル的にもさらにタフにならなければならない」 宮市は、オランダの名門アヤックスも獲得に名乗りを挙げたが、最終的には宮市の才能に惚れ込んだアーセン・ベンゲル監督からのラブコールが決め手になった。 タブロイド紙『Daily Mirror』のジョン・クロス記者も、宮市の未来に期待を寄せる一人だ。 「スピードとクイックネスを含めて、リョウがとてつもないポテンシャルをその体に秘めていることは間違いない。しかし、それを開花させ、アーセナルで大きな成功を収めるためにはまだなすべきことがある。彼にはもっと、もっと強い選手になってほしい」 昨シーズンは同じプレミアリーグのウィガンに所属した宮市だが、右足首のじん帯を2度も損傷。今年3月には手術を受けるなど、リーグ戦の出場は4試合にとどまった。武者修行よりもリハビリが多くなってしまった点も、アーセナルでプレーするには時期尚早と番記者に受け止められている理由だろう。フィジカルコンディション自体も、まだ100%には戻っていない。 22日の名古屋グランパス戦と合わせて、日本で行われた2試合で宮市を左ウイングの位置で合計90分間起用したベンゲル監督は、「基本的には彼のプレーは大好きだ」と笑顔を見せながらも、今後については微妙な言い回しに終始している。 「シャープさは戻ってきている。今まさに上昇気流に乗っている感じだし、戦うチャンスを与えられるべき選手でもある。現在の段階では基本的に彼を残そうと思っているが、この先、チームが多くの選手を獲得するとしたら、私としても再考する可能性がないわけではない」