唐田えりかの華麗なる復活劇 『極悪女王』に刻まれた俳優として“覚醒”する瞬間
唐田えりか、日韓2拠点生活で『アスダル年代記 シーズン2』にも出演
そもそも唐田の復活劇は、この『極悪女王』からはじまろうとしているわけではない。2022年には主演映画『の方へ、流れる』でスクリーンにカムバックし、やはり映画のフォーマットにこそハマる俳優なのだと自ら証明。続く『死体の人』(2023年)では激しい感情表現が求められる役に挑み、『朝がくるとむなしくなる』(2023年)では自然体な演技で等身大の女性を好演した。公開中の話題作『ナミビアの砂漠』では出演シーンはわずかだが、主人公と関わる重要な役どころを担っている。これまでにも絶えず唐田の存在は必要とされてきたのだ。 それに2024年からは韓国での活動にも力を入れるため、日韓での2拠点生活を送っているのだという。すでに『アスダル年代記 シーズン2』(2023年)などの出演作があるのだから、『極悪女王』が世界に向けて放たれたいま、完全復活といえるだろう。 本作では劇中に、「スターになる人は勝手に光り出す」といったセリフが登場する。唐田は表舞台に姿を現したときから、つねにそんな存在だった。しかし私たちはいま、彼女の放つ輝きがたしかな努力に裏打ちされたものであることを、『極悪女王』をとおして知ったはずだ。肉体と精神を共演者たちとぶつけ合う本作には、彼女がひとりの演技者として覚醒する瞬間が刻まれている。それも、何度もだ。俳優・唐田えりかは何度でも立ち上がり、叫ぶたび、覚醒する。「『極悪女王』の評判がすこぶるいい」と冒頭に記したが、正直なところ世間の評判など個人的にはどうでもよく思えてきた。大切なのは全身全霊をかけた彼女の表現から、私たち一人ひとりが何を受け取るのかではないだろうか。
折田侑駿