UGC かインフルエンサーか? 「次世代の買い物客は本物のコンテンツを探し求めている」
シャイナ・レインフォード氏は、ローズマリーとビタミンをたっぷり含んだオイルを作り、自分と妹の抜け毛を改善させたことをきっかけに、ヘアケア用品の会社であるバスク&レイザー(Bask & Lather)を創業した。しかし、同氏はいまだに年に1回しかブランド用の撮影を行わず、その代わりに主にソーシャルメディアで顧客がシェアする画像や動画に頼っている。 キラキラの黄色いネイルをしているある顧客は、頭皮の毛髪が回復した様子を見せている。また10万回近く再生されている別の動画では、ノットレスブレイズ(細かく分けた毛束を三つ編みにして作り上げる髪型の1種)のあいだにオイルを塗る方法を紹介している。動画はヘアサロンで撮影されたものもあれば、バスルームやキッチンで撮影されたものもある。 「なんでも共有する。多くのブランドがクリエイティブに数百ドル、数千ドルも費やしているのを知っているが、我々はそんなにお金をかける必要がない。顧客が毎日、同ブランドの商品が登場する動画を作成してくれるからだ」とレインフォード氏は話す。
8割以上のブランドがUGC活用に肯定的
2月下旬にパームスプリングスで開催されたリテール業界イベント「eTail West(イーテールウエスト)」では、いくつものブランドが自社マーケティングとコンテンツ戦略について語った。そこで多くのブランドは、従来のような有償のインフルエンサーコンテンツに代わって、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を増やすことへの関心の高まりを報告した。この話題はプログラムの大きな焦点でもあり、いくつものパネルディスカッションにおいて、顧客にブランドストーリーを共有してもらう方法について検討していた。ビリオンダラービューティー(Billion Dollar Beauty)のようなブランドが、バスク&レイザーとともに、UGCがTikTokで何百万回も再生されることについて語る一方、ヘアカラー企業であるオーバートーン(Overtone)のCEOバーバラ・ロール・カーディエル氏は、ほかのソーシャルメディアでの取り組みをより強化させるためにUGCを使用していることについて話した。 このように、お金を払ってセレブリティやインフルエンサーを起用する代わりに、顧客のコンテンツに注目することは、業界全体に広がっている現象だ。バザールボイス(Bazaarvoice)の最近の調査によると、ブランドの約86%が、UGCはペイドメディアやオウンドメディアよりも業績向上に効果的だと考えている。 バスク&レイザーのレインフォード氏は、顧客が正直なレビューやフィードバックを投稿することを条件に、無償で商品を提供するアフィリエイトプログラムも運営していると語る。このプログラムはTikTokのクリエイターネットワークに参加することで、さらに効果的になる。しかし、UGCは人々がダイレクトメッセージで動画や画像を送るという、また別の方向に効果がある。 それでも、これはただコンテンツを再シェアすればいいという単純なものではない。TikTokやインスタグラムには投稿できるものとできないものについての規定があるとレインフォード氏は話す。たとえば、ブランドコンテンツとしてどのように商品を紹介しなければならないかといったことだ。同氏は、この戦略を見つけだし手順を示してくれたのは、15歳になる息子のジェイデンだったと語る。コンテンツ自体について、レインフォード氏は特定の美的センスを求めているわけではなく、むしろ顧客に自分たちのありのままの生活を見せてほしいと思っている。 幅広い顧客が商品を使用し、シェアしてくれることで、「我々は常に新しいオーディエンスにリーチしている」と同氏は言う。