箕輪厚介が手掛ける“古着バー”が5月にオープン コミュニティーが生まれる“溜まり場”に
WWD:過去にはファッション企業の企画に起用されたが、自身はどのように感じている?
箕輪:これまでにビームスやエストネーションが企画で私を起用してくれたことがある。ファッション好きな人達がなぜ私を起用するのか不思議だったが、ビームスの設楽洋社長が言うには「ファッションというのは片方で“それは違うでしょ”と否定されるようなことをやり、もう片方で“わかっているな”とお客さんが共感し喜ぶこと、両方をやらないとすぐにダサくなり、批判される」のだそうだ。きっと僕を起用する企業は既存のイメージを壊したいとか、変わったイメージをつけたいのだろう。
WWD:ファッション誌の広告営業の経歴を持つ箕輪さんは、ファッション業界をどのように見ている?
箕輪:そもそも、ファッション業界そのものが独特で、ビジネスとしてすごく今っぽい。今は品質や実用性のみで買うことがなくなってきている時代だ。その中で多くの企業が商品そのものの意味を考えたり、熱量の高いコミュニティーを作ろうとしているが、ファッション業界は昔から商品のストーリーや表現、コミュニティーを追求してきた業界だ。別の種族の人から見たら全く訳わからないような商品が、一部の人には魅力的に感じられる――ある意味宗教っぽくもあるが、すごく理想的だ。信者ビジネスとか揶揄されてしまうこともあるが、お客さんがファンになり、ファンが信者になってくれるような商品やブランドでなくては、将来的には価値がなくなっていく。そういった意味でファッション業界はとても先鋭的で、今の時代に合っていると感じる。
WWD:多様な業種に携わる中で、今後ビジネスのカギとなるのは何だと思う?
箕輪:昨今“居場所”“溜まり場”みたいなものの需要を強く感じる。“食うために稼ぐ”のは辛くても、その目的があるだけ、実は幸せだ。将来、AIが仕事の多くを担う時代に突入し、食うために稼ぐことが不要な世界になったら、自分達のコミュニティーに貢献することに生きる意味を感じるのだと思う。金銭的なものを介さない価値の交換や、それぞれが自分に合った方法で貢献する“溜まり場”、すなわちコミュニティーが求められるだろう。例え話として「高級レストランか、バーベキューか」とよく挙げられるが、バーベキューは自分達で火をつけたり、肉を焼いたり、それぞれに役割があるからこそコミュニティーが生まれる。今回始める“古着バー”でも雇う店長やスタッフのアイデアを取り入れたり、お店側とお客さん側の垣根を超えて、みんなで“溜まり場”を作っていくバーベキュー型の店にしていきたい。
PHOTO:KAZUSHI TOYOTA