熊本県産品の台湾輸出に挑戦、知名度向上狙う 半導体のTSMC進出で交流活発化
熊本県の食品加工業者が台湾への販路拡大に挑戦している。背景には、半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の進出に伴う交流の活発化がある。県商工会連合会は「手探り状態だが、熊本の知名度を上げて最終的には誘客につなげたい」と意気込んでいる。 「閉塞(へいそく)感があったところに、拡販の話が持ち上がった」と同県菊池市の茶農家斉藤敏春(さいとう・としはる)さん(58)は話す。茶葉の人気低迷で近年売り上げが最盛期の半分以下に落ち込む中、料理にも使える粉末茶「食べるお茶」が成分検査や書類作成の代行といった輸出支援を手がける対象になった。 商工連は2023年11月、台北市で商談会を開催。日本酒やラーメン、栗きんとん、チーズケーキといった17の熊本県産品を現地バイヤー約20人が試食した。経営支援課の野村宗靖(のむら・むねやす)課長は「反応は上々だった」と語る。 一方で、食べるお茶への関心は低かった。湯に溶かして出したが、台湾では甘いお茶が人気。野村課長は「牛乳で割れば良かった」と振り返る。「売り方が少し分かってきた。次は提供方法を変える」と試行錯誤し、2024年1月下旬~2月上旬にから台湾の百貨店で試験販売を行った。
TSMCの新工場は2024年末の量産開始を予定。台湾からの出向者とその家族計約750人が昨夏から順次来日している。台湾の航空会社2社は2023年9月に熊本―台北を結ぶ路線を開設し、直行便が毎日往復する。 台湾との交流が深まり、輸出拡大への期待は高まっている。熊本県販路拡大ビジネス課によると、2023年度は輸出を計画する事業者のうち約3割が希望先に台湾を挙げた。 担当者は「輸出に挑む企業も増えてきた。時間はかかるかもしれないが、輸出額は伸びる」と予想。国内市場は人口減少で縮小が避けられず「海外市場を選択肢の一つとして意識してほしい」と強調した。