鹿島の根深い問題、複数のOBが口にしているのは? 大胆なアクションで閉塞感を打破したい【識者の見解】
「なぜ今なのか」という疑問の声も
2016年以来、8年ぶりの国内タイトルを目ざし、ランコ・ポポヴィッチ監督体制でここまで戦ってきた鹿島アントラーズ。シーズン前半戦はFC町田セルビアに続く2位で折り返したが、8月以降は失速を余儀なくされた。 【画像】鹿島アントラーズの歴史を彩った名手たちと歴代ユニホームを厳選ショットで一挙紹介! 10月5日のアルビレックス新潟戦(4-0)でリーグ7試合ぶりの白星を挙げたものの、残り試合数を考えるとタイトルへの道はかなり険しくなった。すでにルヴァンカップ、天皇杯も逃している名門にとって、この状況はやはり深刻だ。 そんな鹿島は6日、指揮官とミラン・ミリッチコーチとの契約を解除し、吉岡宗重フットボールダイレクターの退任と驚くべき決断を下した。目下4位で、まだアジア・チャンピオンズリーグエリートを狙えるだけに、「なぜ今なのか」という疑問の声もあちこちから聞こえてくる。そのあたりの実情はまだハッキリしない。クラブからの発信が待たれるところだ。 ただ、吉岡FDにしてみれば、大分トリニータ時代に共闘したポポヴィッチ監督招聘に踏み切った時点で「今年、結果を出せなければ辞めるしかない」という秘めた覚悟はあっただろう。 2011年に鹿島入りし、日本サッカー界きっての名ジェネラルマネジャーと言われた鈴木満氏(現フットボールアドバイザー)のもとで10年以上、ノウハウを学び、2022年からFDに就任。強化部門のトップとして編成や補強を主導してきたのだから、タイトル獲得と常勝軍団の復活はマストだったはずだ。 しかしながら、結果的にはレネ・ヴァイラー、岩政大樹、ポポヴィッチと目まぐるしく監督が代わるだけで、タイトル獲得には至っていない。「旧知のポポヴィッチ監督を呼んだ時点でラストチャンス」という見方も根強かっただけに、吉岡氏本人も今回のクラブ側の判断を納得して受け入れたのではないか。 ただ、より根深い問題と言えるのは、鹿島が吉岡氏以外の強化スタッフを長期ビジョンを持って育ててこなかったこと。随一の“20冠”の原動力となった鈴木氏の剛腕ぶりは誰もが認めるところだが、いつかは鈴木氏も引退する時が来る。それを視野に入れて、鹿島で選手経験のある強化スタッフを長い目で育てていくべきだったのだが、それは複数の鹿島OBが口にしている点である。 「1年前は事実上、現場の強化スタッフが自分1人だけで、チームや選手の状況把握、評価、補強や候補者のチェックなど全てをやらなければいけない状態でした。満さんのような有能なFDだったらそれでも回ったんでしょうが、やはり自分にはそこまでは難しいのが実情で」と今夏のインタビューで吉岡FDは苦笑していたが、彼1人に全てを任せていたのは、小さくない問題として映る。