恋の「若大将」計画が…大学もバンドと落語 入学直後の別れに「ちょっと待ってくれ」と 話の肖像画 喜劇役者、劇団SET主宰・三宅裕司<5>
ところが、大学に入学したとたんに別れてしまったんですよ。
ちょっと待ってくれ、と。すべて恋愛を想定していた設計の前提が崩れてしまったわけです。人生って厳しいな。
大学へ行っても彼女がいないから、つらいんですよ。寂しくって仕方がない。それで、高校のときに一緒に落語研究会(落研(おちけん))にいた友人が大学でも落研に入ったので、電話して、また入部したんです。
もし彼女と別れるのだったなら、明治大学では文学部に演劇学専攻があるから、そこへ入学したかもしれません。でも結局、演劇の道へ進んだのだから、運命とは面白いものだと思います。
《一方で、大学でも仲間とバンドを組んで活動を継続していた。そのころはジャズへ傾倒していく三宅さん。再び、音楽とお笑いの日々を送ることに》
映画といえば、私は座席を取るのがうまかったんです。
今と違って入れ替え制の映画館は少なくて、しかも自由席ですから。それで前の回が上映中というか終わるころ、目と耳を塞いで入場する。そして立ち見している人たちの間を通って一番前、スクリーンの脇に行くんです。
映画が終わると、座っていた人たちは通路に出て後方の出口に向かって帰るので、その後ろに付いていく。こうやってスクリーンセンター付近の一番いい席に座るんです。
だから、みんなからは「関取(席取り)」って呼ばれてました。相撲取りじゃないんだから。(聞き手 慶田久幸)