バングラデシュ出身のマザーハウス新取締役に聞く 「私たちのために働く日本人女性への感動」で日本企業に転職
山口絵理子が代表を務めるマザーハウスは、2006年の創業以来、途上国の自社工場で生産したバッグやアパレル製品を販売している。 “途上国から世界に通用するブランドを作る”をミッションとして、ビジネスと社会性を両立する先進的存在だ。 【画像】バングラデシュ出身のマザーハウス新取締役に聞く 「私たちのために働く日本人女性への感動」で日本企業に転職
ビジネスと社会性の双方を意識して同社は12月16日、「経営幹部が日本人のみで占められているのは理想的ではない」(山口代表)としてバングラデシュのバッグ工場“マトリゴール”で工場長を務めるムハンマド・アブドゥル・アル・マムン(Mohammad Abdullah Al Mamun)を、外国籍社員として初の取締役に任命した。途上国で現地採用されて工場で勤務してきた人材が、日本企業の経営陣に加わるケースは珍しい。
マムン取締役はバングラデシュに生まれ、ダッカ大学で皮革工学を専攻したのちに、現地最大手のバッグ工場で勤務した経歴をもつ。08年にマザーハウスに入社してからはマトリゴール工場で工場長として、革加工とバッグ製造の指揮を取りつつ、約330人の従業員のケアを続けてきた。アパレルやジュエリーなどをも扱う同社だが、全体の売上の約80%を占める革製品を作るのが、マトリゴールだ。山口代表は「コロナ禍でマザーハウスに最も貢献してくれたのがマムンだった。倒産・休業した現地の工場が多い中、約330人の従業員全員を繋ぎ止めながら、7割の生産能力を維持してくれた」と感謝する。
「技術者と経営者の両面を併せ持つ珍しい人」と山口代表が評するマムン取締役とはどのような人物なのか。東京都台東区のオフィスで、来日中のマムン取締役にこれまでの歩みやリーダーとしての哲学を聞いた。
“ボス”ではなく“友人”を目指すマネジメント理念
WWDJAPAN(以下、WWD):山口代表との出会いについて聞かせてほしい。
マムン取締役:08年当時、一人の日本人女性がバングラデシュで革製品を作ろうとしていることを、新聞を読んで知りました。「なぜ彼女はそんなことを志しているんだろう?」というちょっとした好奇心から、絵理子さんに会うためにマザーハウスの面接を受けたんです。