取り残された捨て猫の物語…優しくも悲しい出会いの数々に「目に梅雨前線が」「心の隙間を埋めてくれた」の声【作者インタビュー】
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、12月20日(金)に単行本発売が予定されている漫画『まるねこププと』(扶桑社)の1エピソード『ただそこにいただけで』を紹介する。作者の吉本ユータヌキさんが、11月13日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、1.4万件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、吉本ユータヌキさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。 【漫画】余韻が残る切なさ…一匹の捨て猫が“訳アリ”の犬や少年と出会う物語に「ププも男の子も幸せになって」の声 ■他の猫と捨てられていた猫が、本当にひとりになって、それから 雨が降る中、数匹の猫が捨てられているダンボールの前にある母娘がやってきていた。「ママー、この猫ちゃん達連れて帰ってあげようよ」と語る娘に、「そうね、可哀想だもんね」と母が答えるも、思わぬ返答をした。 「この子はいいや。なんかヘンだもん」そう言われ、他の猫達は引き取られたものの一匹だけ残されてしまった丸い猫。涙を浮かべながら母娘を見上げていたが、引き取られることはなかった。一匹取り残され涙を流していると、夜に小さな男の子がやってくる。「きみもひとりぼっちなんだね」と悲しそうに呟いた男の子は、けれど猫を連れて行ってくれることはなかった。 翌日、お腹を空かせた猫に声がかかる。声の主は捨てられていた場所すぐそばにある家で飼われている犬で、ひとりになってしまった猫を気にしてくれたのだ。「お腹すいてるだろ?めしくうか?」と聞いてくる犬に、「生きる意味ない」と答える猫。その言葉を聞いた犬は、「うちの爺さん出す量多くて…手助けだと思ってたべてくれないか?残して悲しませたくないんだ」と語りつつ、自分の分の食事を分けてくれるのだった。 さらに翌日、行き場のない猫のもとに以前現れた男の子がやってくる。彼は猫の入っている段ボールに何かを貼り付けると、「ププ…」と呟いて去っていく。それから、男の子は毎日猫・ププの元を訪れて…。 この悲しくも優しい漫画を読んだ人たちからは、「目に梅雨前線が」「心の隙間を埋めてくれた」「人間だって存在そのものがありがたいんだ」「ププも男の子も幸せになって」など、多くのコメントが寄せられている。 ■ただそこにいる、その大切さを知るからこそ描けた感動の物語 ――同作は言葉こそ少ないものの、非常に感情を揺さぶられるストーリーでした。発想の源になったできごとなどがあるのでしょうか? ありがとうございます。実際に15年ほど前、公園で野良猫を飼ったことがあるんです。公園で目から血を流してボロボロになった猫がいて、その時持っていたお菓子を出してみたら、すごく喜んで食べて、当時住んでいたマンションの下まで付いてきたんです。最初はマンションの裏に段ボールを置いて、その中にエサを入れてあげたりしてたんですけど(今はよくないとわかるんですが、当時知らなくて)、大雨が降った日に妻(当時彼女)が家で保護して、それを機に飼うことにしたんです。飼ってすぐ病院に行ってみると、病気を患っていて余命半年と言われてしまい、僕も妻も覚悟しながら飼っていました。でも少しずつ回復していき、結果的に7年半も生きてくれました。その子と過ごした7年半を今思い返すと、ただ家の中でゴロゴロして、一緒にご飯食べて寝て、それだけだったのにすごく思い出深くて。一緒に過ごしてくれた7年半に感謝しかないと思い、この漫画を描いてみました。 ――本作では、新しい飼い主のもとを逃げ出して男の子に会いに行くシーンが非常に印象的でした。本作の切ない雰囲気を表現するなかで、特に「こだわった点」あるいは「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。 言葉少なく描いたんですけど、それは動物と人間は話せないからということだったんですけど、気持ちを交わすことはできると思っています。だからこそ、もう一度男の子に会いたいって気持ちはププの中にもあるだろうと、そうあって欲しいという願望でしかないんですけど。なので、ププと少年の気持ちをいろいろ想像しながら読んでもらえたらと思います。 ――特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。 全部気に入ってます!全編通して、自分の描きたい形が表現できた作品になったと思っています! ――「めろん」ではなく、これからも「ププ」として過ごすことになりましたが、男の子が初めに「ププ」と名付けた理由についてお教えください! そこは内緒にさせてください! ――今後の展望や目標をお教えください。 ププをもっとたくさんの方に知ってもらいたいと思っています。きっと心がちょっと穏やかになると思うので。殺伐とした話題が多く、心から疲れちゃうこともあるかと思うので、そんな時にププが癒しになれればと。なので、もっと知ってもらうために、アニメ化を目指したいと思っています。 ――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします! いつも読んでくださって、ありがとうございます。12月20日に書籍『まるねこププと』が出ることになりました。この書籍ではSNSでは公開することのない、書き下ろしが2話あり、そこでププの生活1年が締めくくりになります。もちろんこの先も続いてくつもりですが、1年間でププがなにを思い、ププを囲む人たちがどう感じているのかを、楽しんでもらえたらと思っています。 そして引き続き、ププをよろしくお願いいたします!