荒波と戦ってきた経験…タガノエルピーダ、秋華賞に生かせるか 井崎脩五郎のおもしろ競馬学
秋華賞（10月13日・京都）は、超のつく人気薄が連にからむことは、めったにないレースとして知られる。 創設された1996年以降、単勝オッズが60倍以上だった人気薄は、計188頭出走して、たった1頭しか連対していない。98年のナリタルナパークである。単勝オッズ80.0倍で出走して、桜花賞馬ファレノプシスの2着に健闘した。 ナリタルナパークはこの年の春、桜花賞もオークスにも出走していない。オープンクラスのレースに出走したのは、前走のローズSが初めて。 そして、そのローズSでのナリタルナパークは、先行したものの、超スローなのにバテてしまい、勝ち馬から0秒9差の5着という内容だった。どう見ても凡庸な駆けっぷり。 だから秋華賞でまるで人気がなかったわけだが、秋華賞で2着したあと、デビュー以来の成績を見直してみて、この馬が、決して凡庸な馬ではなかったことに気づいた。 荒波と戦ってきた馬なのだ。 デビューから4戦目まではすべてダート戦。そして、そのデビュー戦で、ダートの1800メートルに2歳のコースレコードをマーク。そして2戦目、今度はダートの1200メートル戦にぶつけたのだ。ダートの1800と1200では、ペースがまったく違うから、付いていくのが精いっぱいで大差負け。 ナリタルナパークは勉強したに違いない。「世の中には、いろいろな距離のレースがある」 デビュー5戦目から芝路線に転向したナリタルナパークは、芝でも同じことを経験する。3歳の7月に2600メートルの松前特別で3着した直後、1200メートルの羊ケ丘特別に出走したのだ。距離がいっペんに半分以下。しかし、大幅な距離短縮をすでに経験したことがモノをいい、これを勝利して、対応力をひそかに磨いていたのだ。 こういう、普通にはあまりないことを経験したのが強みになるとすると、今年の秋華賞の要注意馬はタガノエルピーダかも。この馬、昨年の朝日杯FS（GⅠ）で3着したとき、相手の16頭はすべて牡馬だったのだ。（競馬コラムニスト）
