プロ野球のファンクラブを直撃する「大問題」を12球団に20年間入会し続ける男が警告
いまや伝説となっている2009年の「Caoshima」ユニフォーム(ホーム用の白いユニフォームとビジター用の赤いユニフォームを真っ二つにして縫い合わせた奇抜すぎるデザイン)をはじめ、2008年のノースリーブ、2012年の赤から白へのグラデーション、2013年の"ひとつとして同じデザインが存在しない"1万5000通りのユニ、2017年のパーカー風や2020年のスタジャン風、2022年のリサイクルポリエステルを使ったSDGsユニなどなど、すべて斬新で個性的なものばかり。 「これはシャツなのでは?」「どう見てもパジャマだろう?」とツッコミたくなるようなデザインも多いが、広島のファンクラブ事務局はすべて「ユニフォームです」と言い張る。さらに言えば、必ずしもアパレルとしてのクオリティが高いわけではなく、ハッキリ言ってペラペラな素材だと感じる年も多い。 だが、この変わらぬ姿勢にこそ、アイデア勝負とチープ路線で勝負する広島ファンクラブの真髄が込められているのだと長谷川は指摘する。 「毎年、奇抜なデザインでファンを驚かせながらも、グッズとしてはユニフォームという既定路線を崩さない。そのため、畳んで入れて発送する袋も基本的に同じ大きさが使えるし、ペラペラな素材は軽いので輸送費も安く済む。カープのファンクラブ運営スタッフは12球団でも少ない人数と言われていますが、そうした弱点を感じさせずにファンを楽しませる努力は高く評価されるべきです」 とはいえ、「2024年問題」だけでなく、今後も製造コストや物流コストの上昇は続くとみられる。ファン離れにつながる会費値上げはむやみにできない以上、特典グッズの魅力に頼るばかりのファンクラブ運営はいずれ苦しくなるだろう。そんな状況を打開する策として、長谷川が提唱するのは「体験型ファンサービス」の拡充、それも「ファンクラブによる現役選手とOBの橋渡し」だ。 たとえば、長谷川が子供の頃から熱狂的なファンで、最も長くファンクラブに入会し続けている東京ヤクルトスワローズについては、次のようなプランを夢想する。 「チームを1978年の初優勝に導き、通算191勝をあげたレジェンド松岡弘が始球式をする際に、ポイントを貯めたファンクラブ会員を招待して一緒に守備位置につかせてもらう。あるいは、『栄光の背番号1』と題して、若松勉や池山隆寛、岩村明憲、青木宣親、山田哲人を集めてのトークイベントを開催しファンクラブ会員を招待。参加できなかった人にはその模様を収録したDVDをファンクラブ会員限定でプレゼントする。 そのチームを愛し、会費を払ってファンクラブ会員になってまでチームを支えているファンにとって、現役選手はもちろん、伝説のOBたちとのふれあい、貴重なコレクションを入手することはこの上ない喜び、幸せとなるはずです」 プロ野球12球団すべてのファンクラブに20年間も入会し続けてもなお、少しも飽きることなく「楽しくてたまらない」という長谷川の"レジェンド体験プラン"が、12球団それぞれの形で実現することを期待したい。 取材・文/宮崎俊哉 撮影/Sportiva