ランドセルで入学当たり前? 物価高や多文化共生と「買ってあげたい」親心と 那覇市の小学校で選択自由に
那覇市教育委員会が、市内全ての小学校に通学かばんの選択の自由を呼びかける方針だ。ランドセル価格の上昇や増える外国ルーツの児童との多文化共生が理由だが、一方で形崩れしにくい構造や安全性を評価する声、そして「買ってあげたい」という親心もある。登下校の風景はどう変わっていくのか。(社会部・城間陽介) 那覇市内のある小学校では、2024年度の保護者向けの入学説明会資料に明記した「入学式当日に持参する物」の一つに「ランドセル」と記載した。 教頭は「保護者からランドセル以外の 通学かばんについて質問があれば、自由であることを伝えるつもりだったが、特に出なかった」と振り返る。説明会では通学かばんの自由に言及しなかったものの、「ランドセル以外でも全然問題はない」との認識を示した。 バイクショップ経営の傍ら困窮家庭の支援に取り組む宮城正和さん(36)=浦添市=は「ランドセルでの入学式が当たり前の風潮の中、式直前まで購入できずに悩む家庭もあった」と説明。あるシングルマザーから入学の1週間前に相談を受け、仲間と協力してランドセルを間に合わせた。 「支援者とつながっていない困窮家庭はランドセルを用意できず、子どもを式に参加させたくないと思うかもしれない。選択自由化で助かる家庭はある」と断言した。 那覇市母子寡婦福祉会は、ひとり親家庭などにランドセルを寄贈している。仲盛光子会長は「親だけでなく、子どもにとってもランドセルは憧れ。最近はより丈夫になって、6年間大切に使い続ける児童も少なくない」と、ランドセルの利点も語った。 小1の子がいる父親は「経済事情の厳しい家庭もあり、かばんの自由化は理解できる。でもわが子には買ってあげたい。自分にもランドセルで過ごした少年時代の懐かしい記憶と愛着があるから」と心境を明かした。 外国ルーツの親子の社会支援に取り組む市民団体「多文化ネットワークfuふ! 沖縄」代表の大仲るみ子さんは、新しい登下校の風景に期待する。「外国籍の子が祖国の文化でかばんを選ぶかもしれない」と、多様性を育む契機になると評価。安全性や構造など、ランドセルの利点も踏まえつつ「自分たちで何を持つかを選べるのは良いこと」と歓迎した。