日本のスパコン「富岳」、世界6位に後退--2030年までの稼働めざす後継機の性能は?
スーパーコンピューター(スパコン)の計算速度を競う世界ランキング「TOP500」の2024年11月版で、理化学研究所と富士通が開発した「富岳」が前回の4位から6位に後退した。 【画像】文科省による「富岳後継機」の最終報告まとめ 富岳は2020年6月から2021年11月までTOP500で1位を維持していたが、2022年6月に米国の「フロンティア」に抜かれ2位となった。その後、「オーロラ」や「イーグル」にも抜かれ順位を下げ、4位となっていた。今回、新たに1位となった米国の「エル・カピタン」や、5位となったイタリアの「HPC6」に抜かれ6位となった。米国勢が1位から4位までを独占した。 各コンピューターの計算速度(1秒間に実行できる浮動小数点演算の回数)は、1位のエル・カピタンが174.2京回、2位のフロンティアが135.3京回、3位のオーロラが101.2京回、4位のイーグルは56.12京回、5位のHPC6(イタリア)は47.79京回、6位の富岳は44.201京回だった。 一方、「Graph500」の「BFS」(Breadth-First Search:軸優先探索)部門と「HPCG」部門で、富岳は10期連続で世界1位を維持した。 Graph500はグラフ解析の性能を競う試験だ。グラフ解析は「SNSで誰と誰が繋がっているか」といった関連性のあるビッグデータ解析に用いられる。一方のHPCGは産業利用などでよく用いられる共役勾配法の処理速度に関する国際的なランキングであり、富岳が依然として世界トップレベルの実性能であることを示している。 後継機は5~10倍の実効性能、GPUも採用 富岳は後継機の構想が進んでいる。文部科学省の「次世代計算基盤に関する報告書」の最終とりまとめでは、遅くとも2030年の稼働開始を目指している。 後継機では、富岳と比べて5~10倍以上の実効性能をめざす。また、AIとシミュレーション、リアルタイムデータや自動実験などを組み合わせた「AI for Science」を軸にした計算基盤とするため、近年主流のGPUも搭載する。AIやシミュレーション分野で世界最高水準の性能を目指し、「50EFLOPS(1秒間に5000京回)以上の実効性能」を目標に掲げている。 さらに、半導体技術の進化に追随するため、適宜柔軟にシステムを入れ替えたり拡張可能にし、「進化し続けるシステム」にすることをめざす。 また、「京」から「富岳」の移行には、1.5年の空白期間、つまり計算資源を使えない期間が生じた。富岳から後継機への移行に際しては、こうした空白期間を生じさせないことも求める。