鬼畜だらけ…実在の猟奇殺人鬼がモデルの映画(4)17人の女性を強姦殺害…461年の刑を宣告された”善良な男”
事実は小説より奇なり。今回は実在する殺人鬼をモデルにした洋画をピックアップ。理解に苦しむ残忍な連続殺人や、思わず同情してしまうような壮絶な生い立ちを持つ犯罪者が続々と登場。映画としての魅力はもちろん、モデルとなった事件についても深掘りして紹介する。今回は第4回。(文・寺島武志)
『フローズン・グラウンド』(2013)
原題:The Frozen Ground 製作国:アメリカ 監督・脚本:スコット・ウォーカー キャスト:ニコラス・ケイジ、ジョン・キューザック、ヴァネッサ・ハジェンズ、マイケル・マグレディ 【作品内容】 映画の舞台は1983年のアラスカ州アンカレッジ。モーテルの一室で手錠に繋がれていた娼婦のシンディ・ポールソン(ヴァネッサ・ハジェンズ)が警官に保護される。 すっかり怯え切った様子のシンディは、ロバート・ハンセン(ジョン・キューザック)という男に殺されそうになったと証言する。しかし、ハンセンは善良な市民として地域で評判の人物だったため、彼女の証言は無視される。一方、彼女を保護した警官は納得いかず、シンディの調書を州警察へと送る。 その頃、州警察は立て続けに発見された変死体の謎を追っていた。遺体の状況から、犯人は同一人物だとにらんだ刑事のジャック・ハルコム(ニコラス・ケイジ)は、送られてきた調書から、ハンセンが一連の事件の犯人ではないかと疑う。 彼は捜査を開始するが、なかなか決定的な証拠がつかめない。そんな中、犯人の魔の手は再びシンディに迫るのだった…。 【注目ポイント】 本作は、シリアルキラーで、ブッチャーベイカー(屠殺パン屋)の異名を取ったロバート・ハンセンが1980年代のアラスカ州で実際に起こした事件を題材にしている。 ロバート・ハンセンは、1971年から1983年の間に、アラスカ州アンカレッジ周辺で少なくとも17人の女性を拉致・強姦・殺害。その手口は荒野で自動小銃とナイフを使って狩りをするかのように犠牲者を追い詰めていくという、極めて残忍なものだった。 ハンセンは1983年に逮捕され、有罪判決を受けると、仮釈放なしの461年の終身刑を宣告された。本作では、12年間で少なくとも17人もの犠牲者を出したシリアルキラーをプロファイリングを織り交ぜながら追い込む刑事の執念と、極寒のアラスカの寒々しさが入念に描かれている。 さらに、犯人であるハンセンの薄気味悪さ、警察の初動捜査の鈍さは、治安の悪いアメリカの話とはいえ、日本でも起こり得るのではないかと、リアルに想像させられ、思わず背筋が凍る。 ラストシーンでは、「この映画を犠牲者に捧げる」とのテロップとともに、被害者の写真が映し出され、現実の恐ろしさをまざまざと見せつけられる。 作中では、死体も犯行シーンが描かれず、セリフで語られるのみだが、猟奇性も残酷さが伝わってくる作品に仕上がっている。殺人鬼は、もしかしたら近くにいるのかも知れない…。そんな気持ちにさせられる怪作だ。
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