「ないなら自分たちでつくっちゃえ!」: 不登校30万人時代 当事者たちがつくる“学びの場”
学校や地域とオンラインで連携も
文部科学省が公表した2022年度の「児童生徒の問題行動・不登校調査」では、約30万人の不登校児童・生徒のうち、4割近い約11万人が教育支援センターなどの専門機関から何の支援も受けていなかった。
小中学校における長期欠席の状況
教育支援に取り組む認定NPO法人「カタリバ」が、昨年10~11月に行った不登校に関する実態調査でも、教室で過ごし、みなと同じことをしているが、心の中で学校が嫌だと感じている「形だけ登校」を含む「不登校傾向にある生徒」は41万人と推計された。日本財団による5年前の同趣旨の調査より26%増えていた。
不登校傾向の子どもの推移(推計)
カタリバの今村久美代表は「中学生の約5人に1人が不登校か不登校傾向にあり、学校に対する子どもや保護者の考え方も変化している。多様な学びの受け皿を準備し、地域で不登校対策に取り組む必要がある」と話す。 「多様な受け皿」の1つが、カタリバが2021年に始めたオンラインの不登校支援プログラム「room-K」だ。メタバース(仮想空間)上の子どもたちの居場所であり、学びの場であると同時に、子どもと保護者に専任スタッフが付き、家庭に伴走することを大切にしている点が特徴だ。ただプログラムを提供するだけでなく、一人ひとりに合った学び方や社会とのつながり方をスタッフが一緒に探し、学校や教育支援センターなどと日常的な連携も行う。 スタッフの白井さやかさんは、「オンラインとリアルの教育現場では子どもの姿も支援の見立ても変わってくる。両者が家庭を真ん中に連携できたら、学びにつながる方法を考えられるかもしれない」と言う。 room-Kは行政と連携し、公的な支援の枠組みで行っており、現在は提携する自治体を通じてのみ利用できる。「既存の支援が行き届かない家庭に関する情報や資源をいちばん持っているのは学校。行政と連携することで必要とする家庭に支援を届け、彼らに最適な支援のあり方も一緒に探っていきたい」と白井さんは話している。 取材協力:POWER NEWS編集部
【Profile】
後藤 絵里 ソーシャルワーカー、ライター。1992年朝日新聞社入社。経済部、AERA、GLOBE等の編集部で記者やデスク、ウェブメディアの編集長を務める。2021年に早期退職して社会福祉士に。著書に『産まなくても、育てられます』(講談社)、『見出しとリードで読み解く英語ニュース』(語研、監修)。